人畜共通伝染病とオウム病について
平井克哉(獣医学博士・岐阜大学名誉教授)
人のオウム病に対する補体結合抗体(表2)
検査対象 | 年 | 検査例 | 補体抗体保有率(%) | 研究機関 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
>=8 | >=16 | >=32 | >=64 | ||||
健康人 | '79-83 | 2365 | 22.8 | 7.1 | 1.6 | 0.3 | 5 |
愛玩鳥と接触している健康人 | '75-81 | 294 | 41.2 | 22.1 | 4.4 | 2.0 | 2 |
呼吸器疾患 | '81-83 | 867 | 27.1 | 14.1 | 6.9 | 2.3 | 2 |
呼吸器疾患 | '84 | 16937 | 12.9 | 8.5 | 2.8 | 1.3 | 1 |
頚部リンパ節炎 | '83 | 260 | 100 | 84.2 | 46.9 | 13.5 | 1 |
CF抗体価の32倍以上をオウム病に対する抗体とみると,健康人の1.6%.愛玩鳥に接す
る健康人の4.4%,呼吸器疾患の患者の6.9%,頸部リンパ節炎患者の46.9%に陽性が認
められる。また,1984年の1年間に民間検査機関(SRL,BML,北里およびシオノギ)にお
いて実施された呼吸器疾患患者の調査によると16,937名中,オウム病クラミジアに
対するCF抗体価の32倍以上を示した例が473例(2.8%)であった。アメリカのCDCでは
発熱,悪感,筋肉痛,頭痛,呼吸器症状とCF抗体価32倍以上を示した患者をオウム病と
判定しているが,上述の成績から,1984年には少なくとも473名以上がオウム病患者
と推定される。一方,起炎病原体不明な呼吸器疾患患者は高率にオウム病CF抗体を
保有していることが知られている。このように,わが国の呼吸器疾患患者や頸部リ
ンパ節炎患者には,多くのオウム病罹患者がいることが推定される。
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