獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200105-349

REペットショップ 補足
投稿日 2001年5月28日(月)23時53分 はたの

獣医師ではありませんがご参考まで。

 国際条約たるサイテスも実は政治的駆け引きとお役所仕事の賜物だったりして、かならずしもきちんとしているわけではないのですが、原則でいうと、みっつのおおきなテーマを掲げています。
1、絶滅のおそれのある野生生物が国際取り引きで絶滅に至らないように制限する
2、絶滅のおそれの少ない野生生物については、「管理された」取り引きを認める
3、絶滅のおそれのある野生生物についても、飼育下で繁殖されたものについては、「管理された」取り引きを認める(野生種が附属書1扱いでも、飼育下繁殖個体はより緩い付属書2扱いになり、さらに家畜家禽化されたと認められると、「野生」でないので、サイテスの適用範囲外になります。チンチラやダチョウなど)

 国内では1ばかり強調されがちですが、条約本文では、2 3もかなり重視されています。
 というのも、たとえば全面禁止にしてしまうと、
「ワニが住む湿地がある。ワニを輸出できなければ、現地住民の収入にならない。だったら湿地を耕作地にしよう、となる。が、そのワニが危険にならないぐらいの数、あるいは、そこから捕獲したワニを種親に養殖した個体が現金になるのなら、湿地は守られやすい」という考えがあるからです。
 全面禁止にして、法で開発を禁止することも理論的には可能ですが、経済のゆとりのない国も多いですし、多少ゆとりがある国であっても、自然保護に使える資金は限られています。限られた資金を「本当に危険な」種の生息地保護や、密輸監視に注ぎこむためには、「さほど危険でない」種に厳しすぎる規制をかけるのは逆効果だったりします。理想論だけでなく、「この資本主義社会の中で、民間資本をうまく利用する」ことも考慮されている、と捉えられます。

 ペットショップでご覧になった鳥(やヘビなど)の種がはっきりしないと厳密にはなんともいえませんが、国内で「貴重な感じ」がするものがイコール原産地で絶滅のおそれがあって、商取り引きすべきでない種、であるとは限りません。
 たとえばイヌワシは、日本国内では非常に貴重な種ですが、世界的にみれば普通な鳥で、地域によっては駆除の対象ですし(より希少な山岳棲野生ヒツジの子を襲うので)、飼育下でもよく殖え、国際取り引きの相場は下がりつつあったりします。「ハゲワシ」にしても、頑張って守らなきゃいけない種、ペットにしてはいけない種もありますし、日本の都会のカラスのようにたくさんいて、全然「貴重」でない種もあります(ここまで、あくまでも野生個体群へのインバクトについて、です。ちゃんと飼えるのか、という「命の価値」の議論はまた別にありますが、売り物になっている種の多くは、「ちゃんと飼おうとすれば飼える」ものです。「ちゃんと飼わない」人もむろんいて、それが問題でないとはいいませんが、しかしそれはイヌネコやハムスターにもある問題ですので、「貴重かどうか」には関係ないといえるでしょう)。
 また、野生個体群の保護増殖事業を行っている公的ないし準公的な団体が、余剰個体を売りに出すこともあります。飼育下でよく殖える特定のペアの子ばかり野外に放すと、野生個体群の遺伝的な多様性のバランスをくずしてしまうような時、新しい子は、放すわけにいきません。でも、新しい子や、すでに十分な数を産んだペアを無意味に飼い続けるのはお金がかかりますし、殺処分するのもしのびない。という時など、子を売って現金にして、そのお金で、野生個体群やその生息地を守ろう・・・ということもあるのです。
 従って、ご覧になられたペットショップで売られている個体が、法的に、また倫理的に、「いけない」ものなのかどうかは、種を特定して、その種の個別の事情を調べないかぎり判断はできないでしょう。

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