意見交換掲示板過去発言No.0000-200109-200
>パールちゃん |
投稿日 2001年9月23日(日)12時59分 プロキオン
9月22日の 書き込みの中で、イギリスへ送らなければ診断できないのかと いう内容がありましたが、これはちょっと解説が必要です。 海綿状脳症の場合、病理組織検査診断は容易です。こちらはどこの検査機関で も診断に苦慮するということはないはずです。 千葉県でも この検査で狂牛病ではないかと言い出したわけですし、長野県で もプリオニクス反応検査が実施可能になるまでは、こちらで検査する方針と発 表しているくらいです。 問題はプリオンという病原体があまりに小さすぎて、生体において免疫が成立 しないのです。感染してもプリオンに対する抗体が作られないので、採血して も感染の有無が確認できないのです。このために発病するまで感染しているか 否かをチェックする方法がありません。 したがって、発病した牛と少しでも関係のある牛は全て淘汰するしか方法がな かったわけです。そして、この方法がとられるまでに時間を必要としたため、 感染を広めてしまったのです。この初動防疫に遅れがあったためにイギリスで は400万頭の牛を処分しても根絶に至っていません。 この事情は他のヨーロッパの国々でも同様だったわけですが、スイスで「6H 4」という狂牛病に対するモノクローナル抗体が作られるにいたりました。こ の抗体を用いた検査は100%正確に感染した牛を摘発してくれるということ で、ヨーロッパでは肉として市場流通する牛にはすべて検査するようになって います。 今回、千葉県で発病した牛は、このプリオニクス検査を国の検査機間で実施し ているのですが、この検査で「陰性」と判定されてしまったのです。 これは大変に大きな問題であり、検査の信頼性に大きな衝撃を与えました。病 理組織を診た人はみな狂牛病に違いないと判定しているわけですから、もし検 査が信頼できないとなれば、今後の我が国の防疫指針だけでなく、ヨーロッパ の国々にも方針転換をせまることになります。 # プリオニクス検査を実施した担当者の検査手技に問題があったということ であれば、問題は大分小さくなります。 それでも、検査手技によっては陽性を見のがすかもしれないという不安が 残りますが。 家畜防疫指針に及ぼす影響と範囲があまりに大きいために 慎重にならざるを 得なかったというのが真相だと思います。 初発の事例ですので、慎重な対応はむしろ望ましいと私は考えますが、同時に 平行して進められていなければならない防疫活動に2つも3つも落ちがありま す。私にはそちらが大いに不満です。 また、厚生労働省も急きょ全国の食肉衛生検査所で100万頭のプリオニクス 検査を実施する方向に話が進みましたが、こちらにも問題はあります。 1つは先程あげた検査の信頼性ですが、これは現状であれば、他に選択の余地 はありません。 もう1つは、検査する獣医師の安全です。プリオンはホルマリンに6ヶ月漬け 込んでもおいても失活しません。プリオニクス検査には牛の延髄や脊髄を乳剤 として検査材料として用いるのです。この検査過程において全国の食肉衛生検 査所の職員やと畜場の職員に感染の危険はないのでしょうか? 通常、感染性の病原体を扱うにはP1〜P4レベルの施設基準がありますが、 こちらの基準を考慮する必要はないのでしょうか? 当然、肝心の部分を取り扱う担当者は限られくると推測されますが、その担当 に指名された獣医師にはどのような処遇が用意されるのでしょうか? スクレーピープリオンは200年も昔から、「肉骨粉」のようなものを媒介せ ずに感染、存続してきているのです。プリオンの感染経路を「餌」だけ求める のもおかしな話ですし、プリオンに接触する危険のある職員に対する安全面の 配慮も検討する必要はあるはずです。 私の県では今年定年を待たずに退職する獣医師が3名程いるそうです。この補 充のために職員の募集がありましたが、応募して来た獣医師はいなかったそう です。この話が嘘か誠か、確かめようとは考えていませんが、時節柄、そうで あっても不思議とはいえませんね。 |
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