獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200110-48

狂牛病の報道から
投稿日 2001年10月5日(金)12時24分 プロキオン

ピプキンさん、私の書き込みを参考としていただいているそうで、恐れ入りま
す。いつも、みなさんの不安を煽っているだけではないかと危惧しながら書い
ています。
それでも、書くと言うことは、パニックを抑制するのは正確な情報の提供しか
ないと考えているからです。情報の提供者が信用して貰えないと、パニックや
風評の防止にならないと思うからです。情報の垂れ流しと言われるかもしれま
せんが、危険なものは危険、疑問は疑問として伝える必要もあります。

昨日のテレビ朝日の放映は、農林水産大臣とニュースキャスターやコメンテー
ターとのやり取りが、エスカレートしていました。
テレビ朝日では、一昨日のフジテレビやTBSの報道を踏まえた上での質問で
した。
つまり、加工食品からの感染の危険性(フジテレビ)と牛の解体方法・背割り
からの食肉の汚染の危険性(TBS)についてです。
これらの問題については昨日にまたレクチャーがあったと推測しているのです
が、やっぱり不十分でした。

厚生労働省が検査しているので、それが済んでからと述べていましたが、これ
は認識が違う思いました。
厚生省はメーカーに調査を命じたのであり、フジテレビではメーカーの自己調
査ではなく、国がキチンと検査するべきではないかと提言しているのです。
実際問題としては、国内のメーカーにしても「牛肉エキス」は他社から購入し
ている事が多く、発売元のメーカーも牛のどの部位で製造されているか把握し
ていないことが普通なのです。商品も著しく多岐に亘っているので、全てを検
査しきれるのかという疑問があります。店頭から一時的に撤退しても在庫が日
ならずして出てくる可能性はないか監視する必要も検討されなくてはなりませ
ん。
農林水産大臣の所管ではないので、回答がズレてしまうのは仕方ありませんが、
問題点の把握ができていないというか、伝えられていないのでしょう。

もう1点の背割りの問題ですが、こちらは現場を見たこともないのに風評の原
因になるようなことをいうなという論調でした。
これについてはキャスターが現場を取材したくてもさせて貰えないんだという
気になる発言をしていました。現場の者は一生懸命やっているのだから、失礼
だという回答も違うと感じました。誰も現場の者がいいかげんで、食肉が汚染
されていると発言しているわけではありません。解体方法に問題があると言っ
ているわけなのですから、現場のものが一生懸命にやっているので防ぐことが
できるという論理にはなりません。
こちらも、と畜場のことですから、農林水産大臣の所管ではありません。それ
を言ってしまうと「縦割り行政」といわれるのではないかと危惧したのでしょ
うが、レクチャーの内容が不十分であれば無理に答える必要はなかったと思い
ます。

農林水産省が答えなくてはならないのは、感染経路の解明や今後の清浄化方針
なのです。
廃棄部位を宣伝することでもありません。90年代から現在までに食べてしま
った食肉の安全性を追求されていることを忘れてはいけないのです。
今回の牛は、狂牛病を疑って検査されたわけではありません。偶然、発見され
たのにすぎません。臨床症状を示すことなく食肉になってしまった牛がいたか
もしれないということが問題なのです。国民はその肉を食べてしまったかもし
れないということに不安を感じているのです。

96年の対岸の火事と見ていた時点では、リンパ組織も危険部位として公表さ
れていました。今は4つの組織のみを危険として後退しています。

肉は本当に安全なのでしょうか? この質問に対して大臣は、イギリスでは脳
や脊髄を食べていたからと発言してしまいました。
この発言はいただけません、肉を食べて発病しているのですからね。
テレビ朝日のコメンテーターは、当時ヨーロッパ駐在員でしたので、献血がで
きないのだそうです。本人が希望しても、潜在患者かもしれないという可能性
があれば、献血は断られるのだそうです。

これは何を意味しているのでしょうか?
口から入った病原体プリオンはどのようにして脳や脊髄に運ばれると思います
か、血液を介して運ばれる以外にはありません。血液は、なにも脳脊髄だけに
流れているわけではないことぐらいは、小学生にも理解できます。血液中にプ
リオンが存在して期間であれば、肉に限らず、どの組織でも危険なのです。
むろん、血液中にプリオンが存在している期間というのは一時的な期間かもし
れません。しかし、献血を受け付ける側では、少しでも可能性があれば、献血
を断っているわけです。
肉についえても まるっきり無視してよいともかんがえられません。消費者に
も知らせてひとり一人に考えてもらわなくてはならないのです。

4つの部位さえ食べなければ大丈夫というのは、96年の肉骨粉の輸入は禁止
したから大丈夫と言ったのとどこが違うのでしょうか?
今、そのときの対応の不手際を追求されているという認識が欠如しています。
すでに、食べてしまったかもしれない不安に対するフォローは必要無いと考え
ているのでしょうか?
医原性のヤコブ病患者は、すでに日本にいます。肉を食べるというパフォーマ
ンスではなく、患者さんの血液を輸血するくらいのパフォーマンスをしてもら
わないと納得できません。

注:この部分の発言は患者さんに対して、著しく無神経で失礼な発言になって
  います。
  私も患者さんからの輸血で感染するとは考えていませんし、患者さんやそ
  の御家族を侮蔑したり、傷つけようという意図はありません。
  しかしながら、過去の不手際と今風評の元凶になっているのは農林水産省
  なのだという認識にあまりに欠けている感じていますので、言わずにはい
  られなかったのです。
  この発言についての責任は、獣医師広報版ではなく、私個人が負うべきも
  のです。

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