獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200310-89

マルチレス
投稿日 2003年10月10日(金)16時09分 プロキオン

10月10日のまちゃみさんへ
頭蓋骨の癒合不全と癲癇様の痙攣発作は、本来は別々のものといえます。
(実際には、随伴している例も多いのですが)
単純に頭蓋骨の中の容積が大きくて、癒合が完成されない状態があります。こ
の中に病的な原因で脳における水腫があって容積が増大している場合や単に遺
伝的な要因でそのような状態になっている場合とがあります。
脳室や脈絡叢において炎症が存在すれば、結果として脳室液は増大し、脳実質
を圧迫するようになります。こういうものは神経症状を伴うようになる可能性
があります。逆にそういう脳実質への影響がないものは単なる閉鎖不全です。

癒合不全そのものは、犬の体を小さくするための改良の結果といえます。体を
小さくしても、生命活動を司る脳の大きさまでを小さくすることには1つの生
命として、犬も受け入れ難く抵抗しているということなのでしょう。
ゆえに、頭蓋骨が融合して強固な骨の入れ物をつくることの方を放棄して、若
干なりとも脳に加わる圧迫を軽減したかったのではないかと私は考えています。
それは、それとしても、まだいろいろな要因で脳室における脳室液(脳脊髄液
が増大することはあり、そういう際には脳の実質に障害が及ぶことはあります。
頭蓋骨の閉鎖不全もしくは形成不全と称される犬達は骨質が薄く、外部からの
衝撃から脳を守るのにも不都合な状態にあります。
癒合不全を呈していることが、すなわち不健康であって病的ということではあ
りませんが、犬を守ってあげなくてはならない飼い主としては、充分に注意を
しなくてはならないでしょう。

10月10日のまいさんへ
犬の輸血についてですが、最初の輸血においてはその先生のおっしゃられてい
るとおりです。血液型が必ずしも一致している必要はありません。(一致して
いるのが望ましいのは論を待ちませんが)
最初の輸血によって、2回目以降には抗体が生じて血液型不適合によるショック
が生じます。これを防止するために同じ血液型の輸血が2回目以降は必要です。
病院で飼育されている犬が供血犬として飼育されていたのであれば、人間のO型
のようにどの血液型にも輸血可能な犬だった可能性もあります。
緊急の場合で、たまたま飼育していた犬ということで、血液型が異なっていても
1回限りの使用であれば、問題とはなりません。2回目以降の輸血を血液型を合
わせて輸血すればよいだけです。
主治医の先生の説明はなんらおかしな点はありません。それだけ、患者の状態が
重篤であったということになるのでしょう。

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