獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200310-90

RE:ワクチン接種に悩んでいます
投稿日 2003年10月10日(金)17時31分 プロキオン

10月10日の ともさんへ
どうも誤解があるようですね。ガイドラインが出ていると言ってもある団体の
推奨するものというわけであって、北米やカナダにおける多数派は毎年の接種
の方ですよ!
猫のワクチンの方で始まった話ですが、これには業界の中の駆け引きがあって
のことです。

実際問題としては、このスレッドも少し前に出たばかりであって、その際にも
他の先生から、理想は毎年抗体検査をして、その値によって判断すればよいの
だけれど、費用負担を考慮すると毎年接種した方が飼い主の負担は少なくなる
のではないかとありました。
生ワクチンはおっしゃられるように1年以上の効力は私もあると思います、し
かし、不活化ワクチンの場合は逆に1年でも不安な場合もあります。
それぞれお住いの地域における疾病の流行の有無も考慮して抗体検査すべき疾
病をいくつかに搾って検査して、その有効度を測れば、それがもっとも正論と
言えます。
ある地域では、獣医師会の方でレプスピラの抗体価を測定したところ、6割を
こえる不顕性感染が疑われる結果が出てしまい、急遽レプトスピラも含めた混
合ワクチンが接種されるようになったそうです。
また、別の話では、ある神経病のオーソリティーの先生が混合ワクチンにおけ
るジステンパーとパルボのウイルス相互の干渉によるワクチンブレイクの危険
率に関するセミナーがあったところ、やはり、ワクチンの変更の動きがあった
そうです。
# ちなみにレプトスピラのワクチンは不活化ワクチンです。

獣医師も職業人なのですから、盲目的に毎年接種と言っているわけではありま
せん。地域の疾病の流行事情と市販されているワクチンの適用形態を考慮して
います。
ワクチンの効果と費用負担を考えれば、毎年接種が妥当であろうというだけの
ことなのです。

周囲の100人中80人くらいがワクチン接種をしていてくれれば、ワクチン
など1回も接種しなくても大丈夫のはずなのです。
毎年、各種の疾病の抗体検査さえしていて、それに応じて接種しているのなら
3年でも5年でも10年に1回の接種でも良いのです。
ただね、周囲の情況も不明、ワクチンブレイクの有無、疾病毎の抗体価も不明
というのであれば、取りえる選択肢というのは限られてきてしまいます。


ワクチンアレルギーについての心配であれば、これは接種してみなければ、分
かりません。
接種回数の依存性ではないのです。本人のもっている体質なのですから、少な
い接種回数でも出現します。
狂犬病のような不活化ワクチンにおいてさえも、接種の都度発熱・元気消失し
てしまう子もいます。こうのような子には私はワクチン猶予証明書を出して、
接種していません。
アジュバントへの反応でムーンフェイスになってしまう子にも、アジュバント
を含有するワクチンは接種しません。
これらとは、別に急性アナフィラキシーに対処しようとすれば、接種後30分
とか2時間とか、待ち合い室の残っていて貰わないとなりません。(実際には
説明しても それだけ待機されている飼い主さんはおりませんが)
これらの ワクチンアレルギーの存在が確認されれば、私はワクチンを接種し
ません。この確認は接種してこそ確認できるといえますが、接種回数には依存
していません。
ワクチンを接種できないということは、本人にとってはあきらかに不利益なこ
となのです。金銭の問題ではないので、接種してはいけない子には、接種しよ
うとは考えません。


狂犬病のように法律で定められていないものであれば、接種したくなければ、
誰も強制する者はおりません。
ただ、逆にウイルス同士の干渉によるワクチンブレイクの話を聞いた時は、本
当にゾッとしました。毎年、接種しているにも関わらず、免疫が成立していな
い犬は相当な数に昇るようです。
実例としてあげられた犬達は、著明な複数の獣医師が飼育して犬達であって、
MRIや脳脊髄液の抗体検査でジステンパーの感染が証明されているそうです
。これらの犬達は飼い主である獣医師自身の手で毎年接種されていたのです。
M先生とかF先生とか実名を出しての話でしたし、死後の病理組織標本も作成
されているので、信用のできる話だと思います。

毎年接種する必要はないというのも 1つの提言なのではありますが、毎年接
種しているにもかかわらず免疫が成立していないものがいるのも事実です。
でも、悩む必要はありません。各疾病毎に抗体検査をしてみれば、そこに回答
が書いてあります。

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