獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200409-234

reツキノワグマを殺してもいいの?
投稿日 2004年9月22日(水)14時56分 投稿者 はたの


 いいとか悪いとかの問題ではないんです。やむを得なかった、ということでしょう。

 日本でも奥山放獣は行われますし、その嚆矢は西日本です。中国山地の個体群が(実在が確認されているものとしては)最も絶滅のおそれが高く、かつ山の縦深がなくてヒトとクマの生息的がかぶっている・・・などの理由から。

 同じ映像を見る限り、ですが、そりゃ、改善の余地はあります。歯を痛めやすい箱罠使ってるとか。親子同時に取れなかったのか。
 しかし、移送にはドラム缶罠が使われていました。用意はあったのですね。
 複数を狙っておそらくは複数箇所に罠を仕掛けたのでしょうから、ドラム缶罠の数が足りなくなってやむなく、とか、一箇所に複数個かけるのも足りなかったとか、最善を尽くしたがやむを得なかったであろう事情は常識的に推察されます。3頭分の目撃情報があったようですが、親子かどうか、子の大きさは、などは捕まえて見なければわかりません。

 そして、罠にかかった子グマの周りを親グマがうろついている、罠にかからず方で八方が許される夜明けが来るとなれば、射殺は、選択しうる中では最善の選択です。
 畑を荒らすからというだけで射殺するのではなく、ヒトへの加害の危険性が差し迫っているから射殺するのです。罠にかかった子グマの周りに親グマがうろついていたら近くの人は家から出られません・・・
 射殺した猟師さんが誇らしげに語られたのは、クマを撃ったことについてではないでしょう。そうではなく、「一発で」仕留められた、つまり、半矢にしないで済んだ、クマを無為に苦しませることもなく、人間に危険が残ることもなく事態を収拾できた、ということについてでしょう。
 ご本人にも相当に危険な役目だったのですから、むしろ尊敬に値します。私もクマに会ったことがありますが、速いし、わずかな藪にも見事に隠れるし、なかなか大した獣です。麻酔銃は、国内では銃刀法の関係で使用が困難ですし、万能でもなく、もしもクマが撃ち手に向かってきたら即倒は期待出来ません。仮に使えたとしても選べなかったのは理解できます。

 子グマの放獣についても、確かに高い生存率は期待できないかもしれませんが、比較において最善でしょう。西日本も、東の日本のようにドングリやクリの豊作年であることを祈りたいですね。
 たとえば2歳になるまてで飼育してから放す、などとなれば、期待できる生存率はさらに下がり、ヒトへの危険性は増すでしょう。

 最初に親が罠にかからなかった、という段階で、打つ手は限られてしまうんです。
 そして最初に親を選択的に罠にかけるためにはお金が足りない、ということでしょうね。
 全部の罠に遠隔操作できる装置をつけて、そのスイッチと暗視装置を持った監視員を全部に24時間体制で無期限で張り付かせておくのがどんなに大変かはお分かりになるでしょう?

 カナダであってもすべてが理想的にいくわけではなく、捕殺する場合も多いのです。「ベア・アタックス 1 2」法政大学出版局、などお読みください。言い換えると、いざという時にすぐに殺せる用意があるからこそ、殺さないですむギリギリの手が使えるわけで、それがダメだった場合は当然射殺することになります。
 大型獣とヒトの関係というのは、なかなかにきれい事ではすまないのです。
 世界的に見ても、日本はクマとヒトとの距離が近いのですし、少なくとも10年ぐらい前からは、そのマネージメントは一定レベルに達しています。足りない部分、もっとやりたいことはいくらもあるでしょうが、後はお金の問題です。人材不足もありますが、それも突き詰めればお金です。

 日本のクマのより以上の幸せを願われるのでしたら、関連学会や研究機関や研究者への寄付をお勧めします。畑を荒らされた農民の立場になれば難しいことではないでしょう?

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