獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200504-31

re:教えていただけますでしょうか
投稿日 2005年4月4日(月)15時43分 投稿者 プロキオン

4月3日の リリーさんへ

すでに、とびいりちゃんからのレスもあるようですが、全てのケースが
問題なく心配いりませんということでもないので、その分を補足という
ことで。

猫の避妊手術後の術野の腫れということですね。この場合は、2通りの
場合があります。
簡単にいうと、問題ありの場合と、時間が経過すればなんとか元にもど
っていく場合とです。

術創の腫脹というのは、その多くが動物自身が傷口をなめる事に由来し
ています。
この場合、皮下脂肪が多い個体であったりすると糸で縫合した部分に水
が溜まってしまうこともありますし、皮膚以外でも腹壁の筋肉が炎症を
起こして、土手のように固く盛り上がって腫れてしまうこともあります。
このような場合であれば、炎症の結果ということで、時間を経て炎症が
静まってくれれば、治癒あるいは改善ということになります。
傷口の癒合が遅延することはありますが、縫合糸がかかっている間は、
むしろ安全であって術部が開いてしまうということはないでしょう。

充分な癒合が完了していないうちに抜糸してしまうと、何かの衝撃で縫
合してあった部位が開いてしまうことがありますので、抜糸の時期を事
務的に判断するのではなく、動物自身をよく診てから判断する必要があ
ります。
(こちらが、後者の方です)

問題ありの方は、術後ヘルニアが起きてしまった場合です。使用する糸
の種類や強度、保持期間を誤って選択した場合とか、非吸収糸であって
も腹壁への糸の掛りが浅く、糸が外れてしまったとかが原因として考え
られます。
このようなことも、あながち無いことでもなく起こりうることと言えま
す。こちらの場合であれば、そのまま放置しておいても自然に治るとい
うことはありませんから、再縫合が必要となります。

前者であれ、後者であれ、やはり一度情況を確認されておいた方がよろ
しいでしょう。
問題が生じていなければ、それでよいのであって、確認を怠って後に禍
根を残してもしょうがありません。

これは全然自慢にもなりませんが、私自身の経験で「術後の腫れ」であ
ろうと高をくくっていたら、術後ヘルニアになっていたことがあります。
何ヶ月か後にワクチン接種で来院した際に、これが気がついて、病院負
担で再手術したことがあります。
このときの原因は、腹壁への縫合糸の掛りが浅く、激しく腹壁が動いた
時に糸が筋線維を食い切ってしまったためのようでした。

本質的には、術部の抜糸がとどこおりなく済むまでが、手術ですので、
執刀された先生に情況を確認していただくのが、話の筋というものなの
ですが、
動物愛護団体が絡んでいると、執刀者に対するクレームと受け取って、
急に風向きが変わってしまうこともあるようです。私の住む県において
も、術後感染があって、縫合部が化膿してしまったのにもかかわらず、
まったく執刀した獣医師(県外在住者です)に連絡をとってもらえず、
処置を受ける事ができず、困って地元の先生に泣きついたという例もあ
ります。この例においては、膿瘍化が始まってしまっていたようで、ど
のような手術をしたのか、また抗生物質を使わなかったのかと、県内の
獣医師の間で、誰の手術と話題になりました。

もし、リリーさんの猫に対する対応が要領を得ないようであれば、他の
先生の門を叩いた方が良いかも知れません。
誰しも他の先生の後始末に良い顔ばかりはしていられないでしょうが、
その辺は逆の立場にたてば納得していたでけるのではないでしょうか。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。