獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200604-135

re至急!!鳥の卵をを孵化させたいんです
投稿日 2006年4月16日(日)21時12分 投稿者 はたの

獣医師ではありませんがご参考まで。
人工孵化にはそれなりの用意が必要で、残念ながら、今回の卵はその準備を間に合わせるのは困難かと思います。鳥卵は15度c前後がもっとも保存性が良いのですが、それでも数日で孵化率は低下しはじめますし、数日以内に準備を整えるのは困難だからです。

 必要なものは、精密な秤(精度と価格から、分銅式の上皿天秤がお勧め)×1、孵卵器(インキュベーター)×2、孵化器(ハッチャー)×1〜2、消毒薬(ホルマリン+過マンガン酸カリウムが定番ですが、危険ですので、比較的手軽に行うのなら塩素系でもよいと思います。各社サイト等で鶏卵への使用の適否をお調べください)、婦人用水銀体温計数本、検卵器(白くて透けて見えるのなら伝統などで自作も可能です。透けない場合、心拍感知式のものが必要です)が最低でも必要です。
 産卵数時間以内の卵重を計測できていない場合で、かつ、その種の卵重係数を調べられるのなら(カナリアならおそらく数値は存在するはず)、ノギスも。


 以下、手順を簡単に。
 新鮮時の卵重を計るか、卵の短径×短径×長径×係数kwの式から、新鮮時卵重を推定するかします。
 縦軸に卵重、横軸に孵化日数を置きます。原則として、鳥の卵は、孵化直前(嘴打ち前)までに、新鮮時卵重の15パーセントを失います、ただし、カナリアのような小型種の場合は18パーセントと置くのがよいでしょう。
 この「18パーセントの卵重減少」の予定線を、卵1コごとに引きます。
 孵卵器内の湿度が高ければ卵重の減少度は遅くなり、乾燥していれば早くなります。高湿度の孵卵器と低湿度の孵卵器を用意し、毎日重さを計り、重さの減り方が過大なら高湿度の孵卵器に移動する、過小なら低湿度の孵卵器に移動する、ことによって、「正しい卵重減少」ラインに沿うようにしていくわけです。

 孵卵器は電気関係に注意しつつよく洗浄し、消毒します。そして温度を設定します。この際、婦人用体温計以外の温度計は公差が大きく不適当です。温度は、平面孵卵器か立体孵卵器かによって異なります。それぞれ、説明書に従って、所定の高さ(卵の数ミリ上または卵の中心)で温度を計測しつつ、サーモスタットを調整します。温度の安定には数日が必要です。また、ヒーターの出力が弱い機種の場合、30度程度に保った保温ケースに入れないと永遠に安定しないこともあるので、その場合はガラスフレーム温室・ヒヨコ電球やパネルヒーター、サーモスタットなどを用意して二重式とします。
 設定温度それ自体は種によってことなり、また、管理者の考えにもよるので、ご自身でご検討ください。
 また孵卵器は、できるだけ窓が少なく、温度が安定している部屋で、直射日光を避けて設置します。

 孵卵開始後1週間から10日程度で、未受精卵・中止卵を除去します。後は前述の卵重管理をしていきます。
 既知の日数から、あるいは再度の検卵から、孵化を予測し、前日には孵卵器から孵化器に移します。孵化器も事前に消毒しておきます。この時期、やや高湿度とするほうが孵化率が高い傾向があると言われています。
 あとは孵化を待ち、それが必要で、かつ可能である場合、孵化の補助を行うこともできますが、詳しくない場合には予定時刻から48時間程度までは手出ししないほうが無難でしょう。

 孵化後は、体内の卵黄の吸収を待って、給餌を開始し、育成していきます。正しい初期飼料を用意するとともに、商品名aviproのような消化酵素剤の併用が有効でしょう。

 以上は、人工孵化の常識レベルのみです。
 小鳥のさえずりの学習について研究している研究者たちは小型鳥類の人工孵化や育雛を普通に行っていますから、より詳細なノウハウに関しては、そうした人たちが書かれた論文や著作を参考になさればよいでしょう。
 また仮母という選択肢も検討の余地があります。
 全般に、きちんとした準備もなしに簡単に高確率で成功できるほど簡単ではないが、勉強も含めてきちんと準備すれば一般家庭でも行えないことはありません。

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