獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200608-74

RE:獣医学生さんへ の関連
投稿日 2006年8月11日(金)21時58分 投稿者 はたの

平行線、望むところです。であればこそ、コメントする意義があるというものです。
古い民主主義には、「全会一致は無効」という知恵があったりします。反対意見、つまりは平行線を辿る意見が出ないのは、(場の雰囲気に流されたなどで)不自然不健全であるから、ということですね。

どこでコメントするかの自由はコメントするかたにあるでしょう。しかし同時に、「クローズドに逃げるのは卑怯だ」とコメントする自由もあるでしょう。

獣医学生は獣医師ではありません。しかも同時に、「管理を任されている」わけで、畜主でもあります。同一人が両義性を保っている場合には畜主属性が優先するのは前レスの通り。テクニカルな質問かどうかは問題になりません。素人がテクニカルな質問をしてはいけない、ということはありますまい。そして獣医学生は、お免状をまだ得ていないわけですから、素人です。

情報公開と垂れ流し、ご立派なご高説です。では、情報統制と情報公開の差は奈辺にありましょうか? 
情報統制と情報垂れ流し、どちらがまだマシ、でしょうか?

一部がコピペされるなんぞどうでもよいのです。不正確な情報でもかまわないのです。自己決定権には、「現時点で、医学的に、あるいは科学的に、正しくないとされるされる情報に接し、判断材料とする」権利も含まれます。その結果を引き受けるのは決定した本人ですから。
一例をあげます。私自身、胃潰瘍をやりました。主治医に、ピロリ検査(と出た場合の除菌)
を勧められました。私は断りました。ピロリが(胃ガンより致死率が高い)食道癌の抑制作用があるかもしれない、という論文に接していたがゆえに。
現時点での日本の”医療における正解”は、ピロリ除菌ですね。ただ、私はそれを現時点における”医学上の正解”とは解さず、”科学的な正解”とも解さなかった、ということです。
最終的にどっちが正解なのかは永遠のなぞでしょう。統計的に結果がハッキリするとしても、個々のケースでの正解不正解はわかりっこないんですから。ただ、どっちに転ぶとしても、結果責任を引き受けるのは私ですね。
くだんの主治医はその論文の存在さえ知らなかったようですから(日経サイエンスなんでけどねえ)「情報統制」と非難はしませんけど、ね。

医療関係者が先回りして「この情報は不正確だから(と患者に代わって勝手に決めて)情報統制してはいけない」というのが、インフォームドコンセントにおける大原則です。

科学の原則は反証可能性にあり、ということは、すべての「現時点での科学的正解」は、暫定的な正解にすぎません。いつひっくり返るかもしれない、ということです。
医学における科学精神の浸透は十分ではありませんから(十分だったら今になってEBMが言われるはずがありませんね。言うまでもない常識になっていたはずです)、医学的な決定はなおさらあやふやなものです。
医療になればさらに。「判断」におけるエキスパートシステムはまだまだお粗末ですし、手技に対する”科学的客観性、再現性の担保”は端緒についたばかりです。解析さえできていないのですから、科学的な運用は先の話です。

だからこそ、患者は、医療関係者の意見にかかわらず、情報に接する権利がある、しかしそのかわり、結果責任を負う(過失責任は別として)、というわけです。
お払いを受けてもいい、民間療法に頼ってもいい。カルトにハマル権利だってあるんです。ましてや、医療関係者間で意見が分かれる事項については、それが一部のみコピペされ文脈を失しようとも、当然、知る権利があります。

医療関係者の、コメントしない権利、限られた場所でコメントする権利は尊重します。
ただ、そうした態度は、「知らしむべらかず」「患者は黙って医者にまかせろ」の言い換えである、さらに言えば、「野蛮人には国際社会は理解できないから、文明国が保護領として守ってあげなくては」「女には判断力が足りないから、男が庇護してあげなくては」といった差別構造と同じロジックである、つまり自己決定権を理解していないか、理解していて尊重していないかである、と、”私は”解釈しますよ、ということです。
ネット上でコピペされて広まっていくか口コミで広まっていくかは本質ではありませんね。ネットでのコピペのリスクを言い立てるのは言い訳にすぎません。
結局のところ、「素人は不正確な複製を”正しく”理解できないだろう」という差別的な懸念であり、「間違いを犯す権利」の侵害なのですから。

実を言えば、専門家が素人に対して差別的な考えを持つこと自体は好ましい面もあると思っています。プライドがあるというのは良いことですから。
ただ、できれば、プライドのありようを洗練させていただきたいものです。

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