獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200706-143

Re:猫の乳腺腫瘍
投稿日 2007年6月21日(木)10時41分 投稿者 プロキオン

私の個人的な意見としては、主治医の先生と異なります。
先日来、ウサギや猫で末期であるとか手の施しようがないと乳腺腫に手をつけかねているという投稿が寄せられています。
乳腺腫には、著しい効果があるという化学療法剤もありませんから、そのまま放置しているのであれば、腫瘍が大きくなって自壊してきます。この状態は動物にとっても飼育者にとってもよいことではありません。大きくなりすぎて切除できないと嘆くよりは、切除可能なうちに切除しておいた方がよいと考えています。これは、切除によって、治癒するということではありません。
しかし、大きくなりすぎて切除が極めて困難になってから、どうにかしてくれと泣きつかれても、こちらも手をつけかねてしまいますし、患者の負担もそれだけ大きくなってしまいます。再発はするにしても、患者の負担をできるかぎり小さくするべきと個人的には考えています。切るなら小さいうちにです。


>先日再びシコリを確認し病院へ…リンパにまで転移している為、きれいに取ったとしても必ずまた出てくるし、切ることによって癌細胞を全身に広げてしまうので何もしない方がいいと言われました。

11歳での卵巣摘出ですから、この手術自体は乳腺腫に影響をあたえるということはないでしょう。で、あれば、乳腺細胞がある限り、乳腺腫の再発は当然のことながら予想されることとなります。
リンパ節に細胞が飛んでいるのであれば、リンパ節も切除が必要ですね。全身がに広がるというのは可能性はありますが、そのまま放置しておいて、広がらないのかということもあります。場所的には、肺のレントゲンも確認されておいた方がよいくらいです。

>手の施しようが無いからなのか、その後についての話は一切無し。このまま全身が癌に蝕まれていくのを黙って見ていろということでしょうか……

これは、その先生の性格の如何にもよると思います。まったく、手の施しようがないのであれば、乳腺腫の腫大と自壊が起きてくるであろうことに対して、どのように対処していくのかの方針が必要です。
また、当然のことながら、消耗していきますから、そちらへの対応として、どこまで支持療法をとるのかという意見調整も必要ですね。

>少しでも癌の進行を遅らせる方法や、良いキャットフード等は無いでしょうか?

これはありません。現在、知見としてある治療方法で可能な限り摘要してみるということにつきると思います。キャットフードでは無理でしょう。

>手術するべきじゃないなら、他の病院に行っても同じ事を言われるだけでしょうか?

乳腺腫の場合、炎症性乳腺腫は外科的なアプローチは禁忌となっています。これこそが腫瘍細胞を全身に拡散させてしまう可能性があるからです。こちらの場合であれば、手術が余命を縮めてしまうことになりかねません。
けれども、そうでない乳腺腫であれば、切除しておいた方が患者自身も、それを看ている飼い主さんも不快な思いをしなくて済むと考えます。

おそらく、患者の年齢的な要因がネックと感じておられるのではないでしょうか?

>右前足の付け根に大きなシコリのようなもの(コリコリと固い物ではなく、中に水が溜まっているような物)があります。病院では脂肪の塊だろうと言われましたが、その時も触診だけだった為、乳腺腫瘍が関係しているのではと考えてしまいます。

診察していないので、このようなことに言及してはいけないのですが。
私の経験からの推測では、嚢胞化したリンパ節ではないでしょうか? リンパ節の中にリンパ液が溜まって、けっこう大きくなります。シリンジで排液してあげると見た目は小さくなりますよ。

私の個人的な意見としては、再発は織り込み済みで、手を出せなくなる前に、まだ小さなうちに切除しておきたいということになります。
何もできないと見ているだけというのよりは、何かできることは可能な時期にやってしまっておこうということにつきます。獣医師によって、考えに相当の違いであるであろうとは考えていますが。

最近、このような相談が多いのですが、ネットでの相談ではいかんともしがたいですね。実際問題として、このような症例を引き受けてくれる先生にめぐり合わなければ、結局は何も変わりません。
時間だけがいたずらに経過して、本当に手をつけかねてしまう状態になってしまっているのではないかと想像しています。

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