意見交換掲示板過去発言No.0000-200804-36
フィラリア予防薬の服用開始時期は |
投稿日 2008年4月13日(日)11時27分 投稿者 プロキオン
関連の質問があるようですので、補足がてら説明しておきます。 フィラリアの感染というのは、蚊を媒介として起こりますが、この場合ただフィラリアの仔虫が存在していれば感染するという事ではなく、感染する能力をもった仔虫(感染仔虫)にまでフィラリアが発育していることが前提条件となります。 この感染仔虫というのは、蚊の体内で脱皮を繰り返して第三期仔虫と呼ばれる段階にまでまで発育している仔虫のことを言っています。つまり、これ以前の仔虫であれば、他の犬への感染能力は有しておらず、蚊が飛来していても犬へのフィラリア感染は生じません。 そして、この感染仔虫(第三期仔虫)にまで発育するのには、ある程度の気温が持続していることが必要です。 フィラリア予防薬の服用期間というのは、このある程度の気温が持続してフィラリアの仔虫が感染仔虫にまで発育して他の犬への感染の危険性がある期間・季節を通して服用することとなっています。 この期間というのは、HDU(Heartworm Development Unit)と言いまして、 「1日の平均気温」−「臨界温度・14℃」=1日HDU で表わされます。 この1日HDUが累積されて、「130」という数字に到達した日にちから、感染の可能性があると判断されます。この感染予測日というのは、普通の年であれば、沖縄で2月、鹿児島・宮崎あたりで4月下旬、本州の大部分の県で5月、東北で6月、北海道で6月下旬から7月ということになっています。これが過去の気象データーに基づく標準的な感染期間ということになります。 ( この気象データーは、だいたい過去10年のデーターをもとにしており、逐次更新されていきます。製薬メーカーからも前年のデーターというのは冊子やファクシミリで送付されきており、ある程度の期間ごとにまとめて更新されます。 ) したがいまして、3月や4月になって急に気温が上昇して臨界温度を上回る日にちが何日か継続したとしても、その後気温が下がったりしてしまえばフィラリア仔虫の発育は停止てしまいます。一過性の現象ではなく、累積した持続的な気温に基づいての発育現象であることを御理解願います。 今年は3月に暖かい日が何日かあったから、3月から服用しなくてはならないという事ではありません。服用開始時期には、今年にかぎってというような大きな変動はなく、だいたい毎年同じ頃に服用の日がやってくるということになります。 そして、大事なことなので何回も繰り返しますが、私達が「フィラリア予防薬」という呼んでいるのは、実際には「体内に侵入した感染仔虫の駆虫薬」というのが本当の姿です。 感染仔虫が犬の体内に侵入していない時期に服用しても、まったく仕事をしていません。 ピッチャーがボールを投げる前にバットを振っていることになりますので、ものすごくおかしなことになります。 この「予防薬」は、フィラリアの感染の危険がある期間より以前に服用しても意味はありません。感染開始の時期から1ヶ月以内に服用を開始するということで、その効果を発現するようになっています。そして、これと同じ理屈で感染が終了してからでも、さらに最後の1ヶ月分を11月下旬から12月中旬くらいに服用させる必要があります。 フィラリア予防薬の服用期間は、フィラリアの感染期間とだいたい1ヶ月遅れて設定されることとなります。 この予防薬は犬の体内に1ヶ月残存して効果を発揮すると言う薬ではなく(実際には2〜3日で分解されて体内から排泄されます)、1ヶ月以内に犬の体内に侵入した感染仔虫を駆虫する薬です。感染仔虫が犬の体内に侵入していないと役目は果たせません。ピッチャーがボールを投げてきたら、とにかくバットを振って当てにいくということになります。 「予防薬」というのは、フィラリアの成虫が犬の心臓に寄生してしまうことを予防するという意味で解釈してください。 紹介しましたこのHDUというのも、各主要地方都市の気象データーをもとにしておりますので、山間地や黒潮の流れるような温暖な地域では、それぞれ若干事情が異なってくるとことも考えられます。その状況に応じて服用期間の短縮や延長は必要になります。
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