意見交換掲示板過去発言No.0000-200906-71
Re3:動物と人・獣医師とのトラブル回避の方法 |
投稿日 2009年6月25日(木)11時36分 投稿者 プロキオン
先のレスでも感じたのですが、私もだぬどん先生の意見とその多くが重なります。 中立公平で死因の究明というのがないかぎり、臨床獣医師の参加は望めないように思います。また「顔が見える者」というのも、その説明において臨床獣医師が納得できるだけの力量をもっている者ということも意味しています。 これは、臨床の場において特定の教科書が存在しておらず、大学においても満足のいく臨床教育が実施されていないことに由来しています。ひとつの病気においてさえ、この薬をこのくらい服用させなさいというものはありません。大学を卒業して、街の臨床医の下で勤務しながら、そこの院長先生や先輩獣医師の診療を見て学んでいくのが、臨床の実態です。つまり、この方法で治療しなければ、それは誤りであるとかミスであるとかということがないのです。病院によってさまざまな治療法が存在しているのです。 自分の学んだ方法こそがベストであり、他の先生のやり方は間違っていると言い切れる者の方が獣医師としては、どうかしています。 では、統一化したマニュアルを作ればよいのかというと、これも「否」です。そのようなマニュアルが作成してもらえれば、臨床医にとってはむしろありがたいことなのですが、これまた当然のごとく、そのマニュアルのとおりにやっていれば良い、マニュアルのとおりに実施していれば訴えられる事もないという考えに繋がっていきかねません。 欧米の獣医療は、わが国よりも進んでいると受け取っている飼い主さんは多いのですが、実態として実に多くの安楽死があります。薬剤によるコントロールの効果が落ちてきたとか、危険の伴う手術とかになると獣医師自身が訴訟に繋がりかねない患者を避けるようになるからです。自分の手にあまるので、他所へ行ってくれ、他所でもたぶん同じでしょうから、治療はここまでとして他の選択肢を考えましょうという流れが多くなるのです。 わが国の獣医療では、欧米では安楽死を進めるステージに近い状態になってからやっと病院にやってくるというケースがまだまだ多いです。そこから、なんとか少しでも状態を改善できないかとあがくことになります。大学病院への転院を勧めても、とても東京までも行っていられないという飼い主さんの方が普通の存在です。 トラブルの種を抱え込む愚作は御免だ、マニュアルにも沿っていると、そのような患者をお断りしていれば、誰がその飼い主さんの心を拾い上げてくれるのでしょうか? 大学病院と地方の町の病院とでは、スタッフの数も機器も薬剤も、違っていて当然です。同じ治療を期待されてもできようはずもありません。それでも、なにもしないでいるわけにもいかないのです。 飼い主が期待している治療内容に及ばなくても、自分に出来る事ははたさなくてはなりません。その治療が大学病院のものと違っていたからと訴えられた獣医師がいたとして、私は、その獣医師がミスを犯したとは考えませんし、追求する側に立ちたいとは思いません。 臨床医は、ある程度の心意気がないとやっていられませんし、治療法が確立していない病気だからといって見ているだけでよいわけではありません。病院の数だけ治療法があるのなら、それらを間違っているとは考えず、まずやってみよう、試してみようと考えます。 自分の方法だけが正しいなどとは、考えていないのです。絶対というものが最初から無いのですからね。 そのように考えていれば、自ずから他の獣医師の治療を裁定しようという気持ちは生じないものです。むしろ、できるわけがありません。 死因を究明しようとすれば、病理解剖や病理組織学的検査は必須です。これをなくして真相の究明はありえません。 これを不必要としてしまったら、臨床に携わる者からの信用は得られませんし、中立公平性が疑われてしまいます。真相を知りたいというのが飼い主さんの願いであるのなら、なおのこと必要です。これをしないで、獣医師にミスがあった、なかったという話であれば、それこそ収拾がつかないでしょうし、そのやり取りを通じて両者の溝はもっと深くなりかねません。双方が傷つかないためにも必要だと思います。 アドバイザーとしての獣医師が顔が見える必要があるというのも、その病気の研究者として実績や経験に富んでいて、そのことを臨床医達が承知しているという前提がないといたずらに混乱を招くだけだからです。匿名の獣医師では信用されません。(匿名というのは、獣医師に用があるのではなく、免許証に用があるというだけですね。) なお、話は異なりますが、投稿者さんは法律の専門家がいるというようなお話でしたが、今回の構想において「主治権」については、何も言及なさっていませんでしたでしょうか?
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