イヌ掲示板過去発言No.1100-200607-111
re: 娘が犬に咬まれました |
投稿日 2006年7月19日(水)17時31分 投稿者 プロキオン
相手がドーベルマンといことであれば、犬歯が大きいのでよけいに大変なことでしたね。 さて、狂犬病について知りたいということなのですが、狂犬病のどういうことを知りた くて、どのへんまでは調べておられますでしょうか? こんなことを逆に尋ねるのも変なことなのですが、一般的な狂犬病についての事柄であ れば、例えお医者様と言えども、辞典に記載されているのとあまり変わらないのが我が 国の現状だと考えられます。そのような点から一般的なことを最初から説明すると、す でに知っているようなことを言わなくてもよいと怒り出す方もいるからです(今でに3 名ほど経験しています) 単純に下記の記載であれば、 >知人の犬は登録・予防接種もしており、うちの娘も予防接種を受けています。 登録が済んでいるのであれば、この犬は狂犬病の予防接種済みのはずですので、この犬 からの狂犬病ウイルスの感染は、まず否定できるでしょう。 また、お嬢様の予防接種というのは、狂犬病のワクチンではないと思います。人間用の 狂犬病ワクチンというのは、少し特殊な部類になりますので、どこの病院でも用意して あるわけでもありませんし、有病地への海外渡航の際でも2回程度は必要です。まして 狂犬病感染の危険がある場合のワクチン接種は、5〜6回くらい接種しなくてはなりま せん。 人間用の狂犬病ワクチンと犬用の狂犬病ワクチンはウイルス培養の過程で異なる細胞を しようしており、メーカーにおける製造量も決して多いとはいえません。 通常犬に咬まれたとして接種されるものは、狂犬病ではなく、破傷風のものであること が一般的であると考えられます。 >保健所の方で今日知人と検査?した見たいですが2週間様子をみてみないとはっきりわ からないと言われたそうです。 こちらは、おそらく咬傷犬の臨床症状の確認ということだと考えられます。狂犬病の最 終確認は病理解剖を実施して脳のアンモン角という部位に狂犬病特有のネグリー小体と いう変化が出現していることを確認しなくてはなりません。しかし、この検査を実施す るためには、犬の脳を取り出さなくてはなりません。それがどういう意味であるかはご 理解いただけますよね。 であるからにして、ワクチン接種犬であれば、2週間の係留期間を設け、当該犬が死亡 しなかったということをもって、狂犬病に罹患していなかったという「狂犬病鑑定書」 を書くことになります。 この2週間というのは、すでにご承知かもしれませんが、狂犬病はひじょうに長い潜伏 期を経て発病に至りますが、人を咬む様な「興奮期」にまで至った犬は、その状態が長 く続くことがなく、「麻痺期」を経て、2週間以内に死亡という最終転機に至るからで す。 逆説的になりますが、人を咬んでも2週間以上生存している犬であれば、狂犬病ではな かったということになります。おそらく、ワクチン接種犬であったのでしょうから、そ の犬からの狂犬病感染は考えられない、だったら、犬を殺して病理解剖までする必要は なかろうという判断で、2週間の繋留検査に留めておくということなのだと思います。 >発症するまでの検査方法がない、あっても困難‥発症後100%死に至る‥怖いです。 ここは、狂犬病ウイルスについて、ひじょうに興味深い点に言及していますね。 その一つは、「狂犬病ウイルスの感染においては、ウイルス血症はおきない」と言う点 と、もう1点、「リンパ球などの免疫細胞を刺激することがないので、発症するまでは 免疫抗体がつくられない」と言う点です。 では、なぜ咬傷を受けた後からの不活化ワクチンで発症を防止することができるのかと いう研究者でも容易に答えることができないような困難な質問へと繋がっていきます。 でも、大丈夫ですよ、事実として、咬傷後のワクチン接種は有効です。これは日本だけ でなく、世界中で確認されている事実ですので。 この辺りの解明は、ようやく手に付き始めたところですが、まずはワクチンは有効なの だと理解しておいていただいてよいでしょう。 仮に、当該犬が2週間以内に死亡したとしても、それからでも、人間用の狂犬病ワクチ ンを接種することで発病は防ぐことができます。 >例えばなのですが狂犬病ではない犬に噛まれた場合でも人が狂犬病に掛かる率は有る のでしょうか? 狂犬病ウイルスを保有していない犬に咬まれても、病原体がいないのですから、狂犬病 に感染する道理はありません。 お医者さんが破傷風のトキソイドを接種するのは、傷口から他の病原体が感染する可能 性を心配してのことです。狂犬病よりも他の感染症の方がより日常的な懸念であって、 具体性があるということになるのだと思います。
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