ネコ掲示板過去発言No.1200-200903-32
Re:猫の心電図について |
投稿日 2009年2月9日(月)10時56分 投稿者 プロキオン
まず始めに言っておかなくてはならないのは、猫の心電図が当てにならないということはないということですね。 もっとも、そこに現れている事象を読み取る事ができているか、そしてそれをどのように解釈するかということが大切なのですが。人間も動物でも自動解析機能に頼り切っているとなにも読み取れていないこともあります、心電図そのものは、単に事象を表現しているだけです。 さて、猫の心電図というよりは、犬の心電図について述べないとならないのですが、犬において「心筋梗塞」という診断がくだされたのなら、まずは「え!?」と言って疑ってみないとなりません。犬は走り回る事を仕事しており、心臓に分布している冠状動脈が比較にならない程発達しており、一箇所二箇所で血管が詰っても他の冠状動脈から血液が供給されて梗塞という状態に陥り難くなっているからです。 通常の心電図検査からでは、この血管が詰ったという状態は、まず検出できないのではないでしょうか。でも、詰った状態というのが「ない」ということにはなりません。 犬の心電図の解析機能を作成した先生が、ある日、Gレトリーバーの心電図をとったところ、普通の波形とは逆に現れる波形に遭遇しました。逆向きではありますが、個々の波形に異常はありませんでした。その先生は、もしかしたら、自分が今まで集めてきた何千という犬のデーターは犬が緊張していたときのデーターかもしれないと思うようになりました。動物病院に連れてこられて診察台の上で横にされてですから、どのような犬であれなにかしらの緊張状態にあるはずということですね。 そこで、解析機能のブレを修正するための標準偏差計算の平方根を立方根に換えて、より安定したデーターとなるように改良しました。 けれども、研究を続けているうちに また疑問に行き当たりました。それが先ほどの冠状動脈の閉塞です。 この問題に対応すべく研究を重ねていたところ、ホルダー型の心電図で継続して波形を採取していく必要性があることに気づきました。2日とか3日とか継続していくと、突然何秒から2分とかの短時間に奇妙な波形が出現することがあったのです。突然出現して、すぐに消えてしまう異常は波形こそが 犬の心疾患の始まりであり特徴ではないかと思い至ったわけです。犬においては冠状動脈の分布が豊富であるから、このような現象が見られのですが、それは異常がなかったということとは異なります。心筋梗塞が起こる可能性は極めえて低いが 血管の閉塞がなかったという事とは違うわけです。このような現象は他の心疾患にもあるのかもしれません(実際にあったようです)。 仮にあるとしたら、そのために またホルダー型の心電図に対応できる解析機能の開発が必要であり、そしてそれも実行されました。 つまり、何が言いたいかと申しますと、簡単に心電図がとれると考えられていた犬においても「緊張」や「採取できない波形」が存在しており、それに対応すべく努力が継続されているわけです。 猫においては、犬以上に緊張する動物ですし、波形の現れ方も犬とまったく異なります。 猫の心電図が当てにならないということではなく、波形の読み取りと解析において、まだ犬のレベルにまでも及んでいない、研究されていないということになります。心電図の波形を研究されている先生ご自身は、まだ犬の方でも満足されておりませんので。 当てにならないというのではなく、読み取った波形が全てではないし、解析も完全とは言えない、猫はまだまだこれからであるということなのです。 ただし、明瞭なものが出現していたのであれば、これはうまく拾うことが出来たと考えて注意しておいた方がよいのではないでしょうか。
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