獣医師広報板ニュース

ウサギ掲示板過去発言No.1500-200503-9

まぎらわしいことなので、ちょっと整理
投稿日 2005年3月4日(金)18時38分 投稿者 プロキオン

何がまぎらわしいかというと、「粘液肉腫」についてのことです。

飼い主さん方にしてみれば、そのまま話していることなので、何がまぎ
らわしいのかと不思議に感じられるかもしれませんが、下記の理由によ
って、ひとつひとつ確認していかないと、ちょっと混乱してしまいそう
なことなのです。


ウサギにおいては「粘液腫」というと、ウイルスによる「粘液腫症(病
)」と腫瘍の「粘液腫」があります。
この両者は、別のものであって、「粘液腫症」の方は、皮膚炎を主要な
症状とするウイルス性疾患であって、これは炎症と言えます。

また、粘液を産生する細胞は、上皮組織由来であって、上皮組織由来の
腺細胞が腫瘍化したものは、通常は「腺腫」、悪性であれば「腺癌」と
いう分類に相当して、「粘液肉腫」という腫瘍名は妥当性を欠いている
ということになります。
# 肉腫というのは、非上皮性細胞に由来する腫瘍のことだからです。

では、「粘液腫」あるいは「粘液肉腫」という腫瘍が存在しないのかと
いうとそうではありません。
これらの腫瘍の起原となっている細胞は、上皮由来の腺細胞ではなく、
非上皮系細胞である線維芽細胞なのです。本来であれば、線維腫とか線
維肉腫とか呼称されそうなものなのですが、この腫瘍細胞に粘液貯留が
見られた状態の腫瘍を、本来の腫瘍の呼び方と区別して、その特徴から
粘液腫と呼んでいます。
そして粘液腫の悪性のものを粘液肉腫としています。

つまり、粘液肉腫というと、ウイルス性疾病の粘液腫症と粘液を産生す
る腺癌との二重の区別が必要ということになります。

粘液肉腫というと、非上皮性の線維芽細胞由来の腫瘍ということであっ
て、粘液腫との区別は細胞内に成分が粘液によって遍在してしまってい
ますので、核の所見から区別することになります。
従いまして、この両者の区別は少し面倒なようです。肉腫の方は、周囲
組織へびまん性に浸潤しますので、完全な切除にはかなり広いマージン
を必要します。ただ、転移の頻度はあまり高くないようです。

ウサギにおける粘液肉腫の症例は、私は耳にしたことがありませんが、
ハムスターにおいては成書に記載されている例があるようです。
また、ウサギの車椅子についても、エキゾチック関係の書籍ではその
利用例が掲載されているものもありますので、これを目にしている獣
医師も比較的多いように思えます。

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