獣医師広報板ニュース

ウサギ掲示板過去発言No.1500-200606-88

斜頚とエンセファリトゾーン
投稿日 2006年6月17日(土)04時11分 投稿者 チーママ

まずは…プロキオンさん、ありがとうございます!!
(私のオロオロを見て、お忙しい中助っ人に来てくださいました:笑)
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斜頚・眼震・平衡障害(ローリング等)等の前庭障害には次の2種類があります。
 @細菌感染(パスツレラ菌等)による内耳の異常などからくる抹消性のもの
 A微胞子原虫の一種(エンセファリトゾーン・カニキュリ)の寄生による
  小脳の炎症による中枢性のもの
つまり@は細菌感染の末梢性(内耳など) Aは原虫寄生の中枢性(小脳)
と思ってください。(小脳の細菌感染もあると思いますが、明日確認します)

ここで3種類の薬が出てきます。
(A)細菌を殺すための抗生物質 
(B)神経損傷を鎮めるステロイド(骨折の時も出てきましたね)
(C)原虫を殺す駆虫剤
獣医さんは診察結果や検査結果から、末梢性か中枢性かを考えて、この3つを
どう使うかを考えるわけです。

従来エンセファリトゾーン症(以下Ez)は国内ではないと考えられていた為、
斜頚などはパスツレラによる末梢性と考えられ、抗生物質の処方がとられてきた
わけです。
ところが調べるうちに「Ezもあるんじゃないか。思ったより広範囲にみられそうだ」
という事になり、従来の処方では「症状は改善できるかもしれないが、駆虫剤は
処方していないのでEz原虫は死なず、再発することがある」となったわけです。

また「初めは抗生物質(末梢性の対応)で様子を見て、ダメならEzを考えて
薬を変える」というのでは、本当にEzだった場合にはその間に小脳の破壊は
進んでいる訳で、駆虫剤が効いても後遺症は大きく残るわけです。

もちろん発症した時にすぐに検査をして、細菌性か原虫性かがハッキリすれば
良いのですが、あいにくEzの検査は時間がかかる事(外部に委託です)、
感染してすぐには陽性反応が出ない事などから、「おそらくそうだろう」
という経験則から判断するしかないようです。
それで多くの場合は「今まで抗生物質でよくなった事が多いから」という
事での処方になるのだと思います。
また、すべての獣医さんがウサギの診療が出来る訳ではない事は、私達飼い主
の知るところで、当然ウサギ特有ともいえるEzの治療を知らない獣医さん、
聞いたことはあるけれど…という獣医さんは多いと思われます。

という事で、斜頚などの症状が出た時には、両方を視野に入れて治療を開始する。
(3つの薬が出るわけです)
その後の検査結果で、細菌感染ならEzの治療薬であるフェンベンダゾールを中止。
原虫寄生(Ez症)なら抗生物質を中止する。というのが考えられる所のようです。

もう一つ知っておかなくてはならない事は副作用ですね。
・ステロイドはパスツレラ菌を活性化することがあります。それで獣医さんによっては
 出来るだけ抗生物質だけで様子を見たい、という事になるのだと思います。
 ですが、万が一Ezであった場合にはどれだけ早く小脳の神経細胞の破壊を止める
 かで、予後が大きく違ってきますので、そこも考えていただきたい。
・またEzの薬であるフェンベンダゾールは「骨髄抑制」と言って、骨髄の働きを
 抑制し白血球・血小板・赤血球などが減少する事があります。その為に投薬中は
 血液検査・血液化学検査で、そのあたりを監視する必要もあるかと思います。

Ezの検査は外部に出すわけで、それも去年やっと一般の獣医さんからの
委託を受け入れたところですから、なかなかそのあたりのルートが分からない
病院も多いでしょう。
またフェンベンダゾールにしても、いつも手元においている獣医さんも
少ないかと思います。

Ezは感染したからと言って、必ず発症するものではないようです。
発症するには、個体差があるようです。ですから、感染していても一生なんら
問題のない子もいるわけで。
それがまた事をややこしくしている原因ですね。
ただ感染が進んで発症レベルになっていると、いろいろな事が引き金には
なり得るようです。
以前夏場の熱中症で斜頚を引き起こしたお話もありましたね。
つまり引き金の一つにストレスはあるようです。
またEzの症状は斜頚や眼震・体の平衡が保てないという他に、
開帳肢(手足が開いてしまう)、白内障・ブドウ膜炎などの目の症状、
てんかん様の発作や震え、駆け回る、強度の食欲等々、さまざまな形で
現れる事があるようです。
ですから、普段から良くご自分のウサギさんの様子を観察して、いつもと
何か違うというサインを見落とさないようにしたいですね。

私はこの病気を知って、一番に検査をしていただきました。
(まさか当時どこでもは出来ないなんて知りませんでした:笑)
万が一キャリア(感染しているが、今は発症していない)ならば、環境と
ストレスをより注意したかったからです。皆さんだってご自分が何かの
アレルギーがあると分かっていれば、それなりの注意をなさるでしょう?
また感染していないならば、感染に注意したかったからです。
ウサギ同士が触れ合う事はなくとも、飼い主が他のウサギを触って感染の
仲介役をしないとも限りませんし。

感染の経路と原虫の生態については、今しばらくお待ちください。
感染経路が尿だけなのか、風邪のように飛まつ感染もありえるのか、確認します。
検査で陽性が出るのは感染後どれくらいたってからなのかも。
消毒方法も。Ezはかなりしぶとく感染力を保持するようですから。

かっぱさん
そういうわけで、再発をした時点で、私はEzを視野に入れてはどうか
と思ったわけです。ただパスツレラでも、症状が出ないままに体内で
潜伏するのかどうか、確かめますね。

ありめかさん
万が一お預かりの子がEz場合、感染経路を知って、他の子に感染しない
ようにしなくてはなりません。
ですので今しばらく隔離生活と、ありめかさんが斜頚のウサギさんをお世話
した後は、十分に手洗いなどしてから、他のウサギさんのお世話をしてくださいね。
特に尿がついたものには要注意です。

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