獣医師広報板ニュース

鳥類掲示板過去発言No.1700-200406-75

このようなレスをしてよいのか、迷いました
投稿日 2004年5月31日(月)12時57分 投稿者 プロキオン

5月29日の おてんばピピの母さんへ

本来であれば、レスせずにそのまま見送るべきことなのですが、タイト
ルから言って、どうもレスが付かないので無いか、そのままにしておい
てよいのか、非常に迷いました。

>診察結果は『多発性過骨症』と診断され、レントゲン写真を見ると
>正常な場合、骨の部分が縁取りされたように見えるそうなのですが
>ピピの場合は中まで白く、骨でうまっていました。
>(原因は発情によるホルモン分泌過剰から骨が作られすぎている、とのことでした。)


発情に関わるホルモンということで、エストロジェンには、カルシウム
の動態を左右する作用が確かにあります。
しかしながら、今の季節であれば、卵殻を形成するために長骨にカルシ
ウムが蓄積されるのは、ごく当たり前の現象であって、生理的な反応と
いえます。
骨の中まで白く写るようでなければ、むしろ不足しているのではと心配
された方が良いのではないでしょうか。
ためしにホルモンが卵胞ホルモンから、黄体ホルモンの優勢に切り替わ
ってから撮影してみれば、本来の写り方に戻っているはずです。

鶏の白血病の1形態に「骨化石症」というのがあることはありますが、
採卵鶏は何千何万という数で飼育されていますが、それでもめったに遭遇
するわけではありません。出会ったことのある獣医師というのは、稀なの
ではないかと思います。

小鳥のレントゲンは電圧もフィルムも犬猫とは異なり、専門に用意して待
っているには、動物病院にとっては、不経済な要素です。
そして、ハード面以上に、その読影に通じることは時間を必要とすること
です。
先般も、筋胃内のグリッドを卵の破片と誤解しているようなレントゲン診
断の相談がありましたが、「猫は小さな犬ではない」という言葉以上に、
鳥は犬とも猫とも異なる生き物です。

今の時期に1回の撮影で「多発生過骨症」と診断するのは、私は早計でな
いかと思います。
1回の撮影でそんなにむずかしい病名を付ける必要性はないし、本当に可
能性を疑っているのであれば、それこそ、時間をかけてキチンと調べてみ
てからでよいように思います。

私の今回のレスは主治医との信頼関係を損なうものですから、本来であれ
ば控えるべき発言内容と言えます。
私が敢て発言した理由は、鳥飼いの方が、あまりに「鳥専門病院でないと」
と言い過ぎるからです。
私はできれば、小鳥の診療なぞしたくない獣医師です。それは、やはりあま
りに小鳥が犬や猫と違いすぎるからです。それなのに昨今は、小鳥の診療し
ますの病院が多すぎます。
安易すぎると感じますし、自称「鳥専門病院」にも問題をないでしょうか?

診療経験を積むということは、それなりの代価を払っていて、初めて成立す
ることでもあります。
犬猫の診療をしながらの病院でも、まじめに取り組んで勉強されている方も
いらっしゃいます。言葉や看板だけの病院選びは意味がないように思うので
す。

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