獣医師広報板ニュース

爬虫類・両棲類・カメ掲示板過去発言No.2000-200503-47

では少し具体的に。
投稿日 2005年3月8日(火)17時49分 投稿者 はたの


 もし今から私が飼うとすれば、このぐらいがスタート地点になります。
 真に問われるのは、こうしたベースの上に何をどう上積みするか、でしょう。当該種についてのものはむろん、近縁種とか、同地に産する別の爬虫類とか、同地の植物相・動物相全般とか、微小気候データとか、ガリガリと調べることになります。
 なお、安定した成体を中長期的に健康に飼うことを想定していますので、幼体とか、成体でも立ち上げとかいうのなら諸要素は大きく異なってきます。

ケージ 室内設置
1×2×2(h)程度。壁面はトカゲが利用できる粗さ。適切な止まり木要す。
 シェルターは構造について要検討。セキセイインコ用などをうまく利用するが、平らな面で寝させてよいか? 野生で垂直に近い面に掴まって寝ているのなら、そのようなシェルターを工夫。シェルターは複数設置し、高温部から低温部まで選択可能にすること。

温湿度 
 基底温は22度前後。関東以南の場合、夏の夜にはクーラーを用いる。
 乾燥地帯産ではないので昼夜の温度変化はなだらかに。
ホットスポット直下35度。日中の気温が、晴れの日設定でケージ上部で28度、下部で25度前後、夜間は25度、22度前後。雨の日設定では高温部を下げる。
 むろん、現地の季節に応じてのアレンジ要す。
 ホットスポット器具はケージ外に設置。隔てるのが金属の場合、熱くなりすぎないか要確認。
 また、紫外線量、可視光線量、赤外線量はある程度個別にコントロール可能にしておく。加えて、伝導で熱を与えるために、これも別途コントローラーを介したパネルヒーターをホットスポットに設置する。

 湿度は80パーセントを中心。密閉しての高湿度を避けるため、湿度コントローラー、換気扇、加湿器など要す。
水容器は小容量で可、ただし25度に保温。蒸発によるヒーター事故要注意。
高湿度低温であり同じ温度であれば「より冷たい」ので、嵌りこむ隙間がないこと。
 いずれにせよ、現地の日照・降雨条件、気象条件、野生個体の晴雨それぞれの行動パターンなどリサーチしての調整を要す。複数のサーモスタット、熱源、送風装置、加湿器、湿度センサー、現地緯度に調整した照明プログラムコントローラー、などが必須。
 気圧の関係から晴雨の設定は屋外のそれと合わせたいが、ここも自動化するなら雨滴センサーなり気圧センサーなりと連動させる。
つまり、季節ごと、天候ごとに、気温・日照・湿度の日周の変化カーブをプログラムし、ある幅内でそれをランダム化して、屋外と連携させつつ走らせる。
どういうプログラムにするかは要調査。
 あるいは、周辺環境でなく個体をベースに考えるのなら、野生個体の季節ごと・天候ごとの体温の日周変化データを探し出し、飼育個体のそれが合致する飼育環境の概日リズムを試行錯誤の中から割り出す。


 まずは野生個体のメニューを調べる。
 哺乳類、爬虫類、両生類、節足動物、軟体動物、植物(糖質・炭水化物含有量でいくつかに細分)程度に大雑把にカテゴリーを分け、容量・摂食頻度・一回の摂食ごとの平均量とそのブレ幅、平均カロリーなどの指標で分類する。
 それぞれの餌要素について、栄養学的観点から、安定入手可能な代用餌を検討する。さらに、寄生虫感染なども加味してメニュー候補を作成。
 考えられるものとしては、ピンクなどのマウス・ラット、ウズラ雛、淡水魚、養殖ものおよび自然にインパクトがない形で採集可能な昆虫(路上で死に掛けているセミなど)、同じくローインパクトに供給される節足動物(サソリ、ムカデ、クモなど)、小型のカエル、陸貝・淡水貝、果実・果菜・根菜類、大豆食品など。人工飼料類はことをフクザツにするので用いない。
 そのメニュー候補を野生時の摂食内容、頻度等になるべく合致し、運動量が限られるぶんのカロリーを差し引いたかたちになるように組む。
 中長期的には野生における成長曲線から大幅に逸脱しないようにする。

ケア
 高湿度であるため、食べ残しや排泄物の管理をこまめに。清掃のしやすさとケージ内のレイアウトの複雑さとの折り合い要す。利用するシェルターが固定するのならば、同レイアウトのケージ2室を交互に使わせ、他方を清掃するのも一案。
 給餌は、その内容のみならず、頻度が重要。かといって、餌探しの空間が限られる飼育下では、物理的に少量頻回としないかぎり、与えた分全てを一度に食べてしまうであろう。日に何回も給餌するか、エンリッチメントの側面含め、動物が寝ている間にケージ内に少しずつ隠しておくなども考えられるが、この場合は腐敗に注意。
 サイズと性質から、人との親和的な接触を好む種類ではないので、状態や活動を確認できる最低限以外、個体には触れない、見ない。トカゲが寝る時間になったら飼育室全体を静穏に保つ。楽しむために近くから見ることはしない。鑑賞は数メートル以上離れる。
 湿度不足に起因する(と思われる)脱皮不全に要注意。ただし通風も重要であるし、ケージ内の温度差も大切なので、湿度、ケージない各所の温度、通風をいかにうまく管理するかが問題。生物研究用の環境管理システムを導入するか、単機能センサーを複数組み合わせ、管理できるプログラムを組んで専用のパソコンなど走らせるか。

 安定して人工環境内累代飼育が出来るようになるものは、動物の要求や、その中で何がボトルネックになるか判っていますから、それ以外はネグレクトできますが、そうではありませんから、全体的に見ていく必要があるでしょう。

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