獣医師広報板ニュース

動物看護師掲示板過去発言No.7000-200202-7

看護士としてではなく、1人の人間として
投稿日 2002年2月3日(日)22時28分 シッポナ

青衣の天使さんがおっしゃるように、看護士として飼い主さんとお話しする機会があれば、意識を変えてもらえる様に話を勧めていくのは私達のするべき仕事だと思います。
仕事だから、というのではなく、私個人として「捨てる・増やす」などという無責任な飼い方をしてもらっては困ると、納得のいくまで話をしていることが多いです。そして、納得してくれる飼い主さんもたくさんいます。
ウチの獣医師の話し方がきつく感じることと話の食い違いが多いことなどから、私が飼い主さんとお話をしていかなければ、治せるものも治らないし、生きて行かれる子も死なせてしまう・・・と思い、飼い主さんに良く分かってもらえるように十分に勉強をして、理解をしてもらえるように話が出来るようになりました。
ペットにとっても飼い主さんにとっても、幸せな時間を少しでも長く、いつまでも元気で一緒に居られるように、誰もがそう願っています。そして、そのお手伝いを少しでもできれば、私にとっての幸せとなります。
治療の必要性、病気への理解、を分かってもらえることで、治療に積極的に参加してくれるようになり、飼い主さんもペットも生き生きしてくるのが目に見えて分かります。そんな笑顔を糧にして、私の看護士という仕事も成り立っているような気がします。
事故にあった子を連れてきた方も、いまいち愛情が湧かない方が多いのは事実です。でも当たり前ですよね、ついさっき抱っこしてまだ数時間しか経っていないのですから。そんな方には「毎日面会に来てくださると、この子も喜びますよ」とお願いしています。毎日会って、撫でて、話し掛けることで、不思議と飼い主さんの方から好きになってくれるんです。好きになってくれたら、猫さんも恩返しができると思ってくれます。
飼い猫、野良猫、さん達の避妊・去勢に関しても、私と同じ悩みを抱えている飼い主さんが、私を通してではなく飼い主さん同士のおしゃべりの中で、手術の必要性をお話ししてくださり、分かってもらえた方もいます。青衣の天使さんがおっしゃっていた事ですね。これが理想だと思います。そして、その方からもう1人、もう1人と、広まっていってくれればとても嬉しい。
もちろん、私も諦めているわけではありません。少しでも捨て猫が減り続けてくれれば、と願い、飼い主さんとのお話をこれからも頑張って行くつもりでいます。しかし、理解してもらえることのない方達が居ることも現実です。
避妊はするけど去勢はしない、というお考えをお持ちの方はいっぱいいて、どんなに話をしていっても、私の声はまだまだ届かないようです。その方のご近所の方が仔猫を連れてきて、「どう見てもあの家のオス猫に似ている・・・」などと思うことが良くあります。たまたま優しい方が拾ってくれたんですが、「他にもいっぱいいるんだけど捕まらないんだよ」と聞くと、力及ばず・・・・と悲しくなります。
私が全部を面倒見れるなら、道端に倒れている子も、親から引き離された子も、誰でも喜んで引き受けます。しかし残念ながらそれは不可能です。でも、せっかく心ある人に助けられ病院に連れてきてもらったなら、精一杯の治療を施してあげたいと思うのは看護士として当たり前のことだと思います。しかし私も、連れてきた方と同じく「面倒は誰がみるの?病院では無理ですよ」となってしまいます。
パールちゃんさんのおっしゃるとおり、「病院でしょ〜」と思っている方は多いと思います。もちろん、悪意はないでしょう。でも、もしかしたら悪意がないからこそ、お互いに困った事になるのかも知れません。病院に連れていっても、治療費は高いし、責任は自分に掛かるし、面倒だからや〜めた!って思う人は、最初から猫を助けたりはしないでしょう。でも、それを知らずに助けてしまう、例え知っていたとしても見過ごせずに助けてしまう、きっとみなさん優しい人です。
「無責任な善意」を「責任ある善意」に変えるために、連れてきた子に対しての責任を取ってもらうために、誓約書を書いてもらい「治療費・今後の生活に対してのすべての責任をとる」と言うことになったら、無責任な人はそこで、「無理無理、そんなの無理だから安楽死できないの?」と来るでしょう。そこからが私達の深刻な問題です。生きて行かれる子に対しての安楽死。苦しい選択ですが、責任を取るべき人がそう言っているなら・・・と、殺してしまうことができるでしょうか。
ある意味、動物病院はサービス業です。飼い主さんに喜ばれてこそ、成り立っていけると思っても良いでしょう。治療費の請求も、きちんとした料金表はありますが、やはり私情が絡んでくることもあります。小学生が拾った仔猫たちは、親が子供達にすべてを任せていることが多く、子供達がお小遣いを集めて治療費を払うなんてことがあります。まだまだ乳飲み子で私が家に連れて帰り数時間おきのミルクと排泄、本当なら「特別看護料」と行きたいところですが、ミルク代だけでいいよ〜、となってしまいます。
子供達が力を合わせて仔猫たちを可愛がってくれて、幸せな生活が待っているなら、何でもやってあげちゃおう!と思ってしまいます。大がかりな手術をして元気になって帰った、良かった良かった・・・と思っているのもつかの間、料金が支払われなくなってしまった・・・なんて事がどの病院でもあると思います。未払いの患者さん、みなさんはどうしているんでしょうか?パールちゃんさんのおっしゃるように、「法的な問題」とした方がいいのでしょうか?
私は自分の子達を、大きな病院の優秀な信頼の置ける先生に診てもらっています。手術、治療、看護、とても良くしていただいていると思っています。そして、それに対してのお礼の気持は、きちんとした支払いと共に伝わっていると思います。でも、支払いをまったくしない飼い主さんって、どんなお気持ちなんでしょうね。請求書を送っても知らんぷり、最悪な人は引っ越して宛所不明・・・なんて事、ざらにあります。
病院の治療に納得がいかなかったのか、タダ単にお金がないだけなのか、病院側としての気持、飼い主としての気持ち、両方を分かってしまうから複雑な気持ちです。
私が「飼い主」として病院に掛かっているから、飼い主さんのお気持ちが痛いほど分かってしまうのかも知れません。先生からのお話も、聞いたことのない病気の名前、ウィルスの名前、薬の名前、カタカナばかりで頭の中が混乱してしまう方が多いです。タダでさえ、自分の子が病気と言われオロオロしているところへ駄目押しのように訳の分からない言葉を並べられ、重さに耐えきれず泣き出してしまう飼い主さんも多いです。私も飼い主としてその1人です。
理解の得られぬままの、治療はとても苦しいです。飼い主さんが理解してくださって、初めて治療が成り立っていきます。とことん話し合って、飼い主さんとペットの不安を取り除きストレスを少しでもなくし、治療の効果がよりいっそう現れるような気持になってもらいたいと思います。そんな話し合いの中で、不幸な子達への問題解決策が見つかる手がかりが掴めると良いのですが・・・「悩める獣医師さん」のお気持ちはどう変化していったのでしょうか?
私が自分勝手なことばかり書き込んでいるが為に、何にも解決しないままですが・・・。
こうしてPCに向かっている間にも、ベランダの親子達4匹はホットカーペットの上で毛布にくるまり、お互いを舐め合って、見ている私を優しい気持にしてくれます。家の中の子達は血もつながっていなければ、歳も離れているので距離はありますが、次々と連れてくる私に文句を言うだけで、誰かをいじめることのない優しい子達に育ってくれました。誰でも生きる権利があり、幸せになれる権利があるけれど、私がそれを断つことになってしまうのは・・・・
結局、何をどうしたらいいのか・・・答えは出ないままで居ます。

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