動物看護師掲示板過去発言No.7000-200202-8
無責任な善意 |
投稿日 2002年2月4日(月)12時34分 プロキオン
私は、こちらの掲示板ではできる限り発言を控えてきておりました。 それは、AHTさん達が動物病院経営者に対する不平不満愚痴を発言しやすい 場所であって欲しいと考えているからです。 今回のお話の場合は、少し発言させて貰っても許されるのではないかなと。 私は基本的にパールちゃんの意見に賛成です。というよりも、ほぼ同じ考えで す。 私の病院へも捨て猫はあります。病院に捨て猫達がいる事を知られてしまって いるので、防ぎようがないのです。健康な子達であれば、まだ里親を捜しよう もありますが、所謂治療しても障害の残る子達がおります。 里親のつてはすでに使いきっておりますし、さらに障害をもった子というのに 善意の引き取り手を待つのは難しいことです。 こういう事が続けば、病院経営というのは行き詰まります。タダ働きにも限度 がありますし、また、私の猫ではないから治療費は払えないという理屈を誰彼 にもなく認めてしまえば、来院される方は皆私は飼い主ではない、野良猫に餌 をあげているだけだという主張になりかねません。 それでは、キチンと診療代金を負担して下さっている飼い主さん達に失礼です し、あまりに不公平な対応といえます。 善意であろうが、無責任な考えであろうが、とにかく飼い主もしくは診療を依 頼したクライアントが診療代金を支払うのが、社会のマナー成立の大前提と考 えます。どのような緊急時であろうと、この一言は事前に申し渡しておく必要 があります。これは、事後のトラブル回避のためにも必要なことです。 私の考えがクールと受け取られる方もいるかと思いますが、これはどの病院に も共通する問題なのですから、私1人が「ええかっこしー」の発言はできかね ます。 また、料金をどの程度負担して貰う、あるいは料金回収を「考える」「考えな い」という問題こそが個々の意見の入る余地があると言えます。 最初から、診療代金のことなんて考えないというのであれば、すべての犬猫に 対しても同様にするべきなのです。 私の所では、支払うと言って下さった方には明細を示してから折半ということ にしています。これですら、もともと下駄をはかせてあるのではと勘ぐる向き もあるかもしれません。支払う意志のない方というのは、どうか条件の合う病 院をお捜し下さいになります。(私の地域は県内一番の病院接近地帯ですので) まあ、大抵の方は最初に言ってありますので、支払いには応じてくれます。 でも、中にはそのまま怒って返ってしまう方もいるわけで、翌日周辺の病院に 問い合わせてみると、やはりそのような患者はきていないという話が返って来 ます。 結局は病院へ運ぶまでが、その方の善意の限界だったのです。関わるのなら最 後まで責任をもつということではないのです。 病院への捨て猫捨て犬も同様です。自ら責任を負う気持ちがないから、病院へ その責任を押し付けていくのです。無責任な善意がなせる行為なのです。 治療や手術が必要な子を一方的に捨てて行かれて、病院がどれだけ迷惑をする かを考えてくれていません。特定の人間を狙って意図してやる行為ですから、 河原や公園に捨てて行くのよりも さらに悪質な行為であると私は考えていま す。 タダ働きさせられて、その子の一生を面倒見なければならない、このような子 達が病院に増えて行けば、いずれ限界が来ます。 古くからいる子、年をとった子から順番に退場していってもらわなくてはなり ません。私にはそれが理不尽なことに思えるのです。彼や彼女は何も悪いこと をしていないのに 「無責任な善意」が一方的になした行為が原因で寿命を縮 められるというのはどのように考えても納得がいきません。 「命の重さ」というのは、決して同じではありません。それには現実問題とし ての「優先順位」が存在します。 今まで、私が助け育てて守ってきたより身近かな命が優先します。この命を守 るためであれば、「無責任な善意」に対して、あなたが飼育して下さいともい いますし、うちでは引き受けられませんとも断ります。金儲け主義と陰口をい われても 間違ったことはいっていないつもりです。 ある病院では「1ヶ月里親を捜しますが、それ以降安楽死します」と病院に張 り紙をしているそうです。私はその先生を決して非難しません。むしろ、勇気 のある先生と評価しています。 そういう考えでおりますので、パールちゃんの発言にあった「みんな知らない、 知らせる努力を」という主旨には大いに賛成です。 どの病院にも共通する悩みであるのだから、「診療を望むクライアントが料金 を負担する」という大原則を声に出して欲しいと思います。 そして、そこから先の、「どの程度負担して貰う」は、個々の病院の経済事情 で考えれば良いことなのです。 動物病院は、迷惑しているということを発言するべきなのです。無責任な善意 に対して苦言を呈するべきなのです。 それが、病院や病院で飼育されている動物を守る事であり、無責任な善意に「 結果としての悪」をさせないことに繋がるのだと思います。 なお、法律では改正された動物愛護法でも(改正される前からも)所有者不明 の犬や猫が負傷していた場合は、発見者は県に届け出て保護と処置をして貰う ように規定されています。この場合の県とは管理センターや愛護センターです。 ほとんどの県において、手術室まで設置されています。 したがって、料金を払いたく無いという方は初めからそちらへ行くべきだと考 えます。 私は、自らが責任を負うことができる範囲の動物達としか関わることができま せん。私自身が安楽死や捨て犬や捨て猫をしなくてはならない事態にまで手を 広げることはできません。 しかし、いつか小さくても安住できる「猫の森」をつくれたらと願っています。 |
|
|
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」 ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴) サポーターや広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)、 多くの人々に支えられています。 獣医師広報板へのリンク・サポーター募集・ボランティアスタッフ募集・プライバシーポリシー 獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。 @mukumuku_vetsさんをフォロー
Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved |