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「わたしを離さないで」
カズオ・イシグロ
謎の全寮制施設に生まれ育った若者たちの
痛切なる青春の日々と数奇な運命を
感動的に描くブッカー賞作家の最新長編(帯より)
むごくて、切なくて、悲しい物語でした。
31歳の介護人、キャシー・Hの語る自分史のような物語です。
31歳という若さで、もう自分史?でも、この小説を読み終える頃には、その意味も、分かってもらえると思います。
はじめは、何の説明もなく、彼女の仕事のこと、そして、過去にあった出来事が語られ始めます。
そして、途中から、これはひょっとすると・・・と、気がつき始めるのです、彼女の本当の役割を・・・。
これは、ある映画と重なる部分があって、イメージが浮かびやすかったですが、でも、もっと悲しくて、もっと辛くて、静かな物語となっていました。
カズオ・イシグロは、かつて「日の名残り」という作品でブッカー賞を受賞し、私は、それが映画化された作品
「日の名残り」
を見ましたが、これは、それとはまた、全く違うイメージの作品となっていました。
これは、ある意味、学園ものであり、SFであり、サスペンスであり、ロマンスでもあるのです。
ヘールシャムという施設での子供たちの普通の生活。楽しかったり、ケンカしたり、思い迷ったり・・・。でも、ちょっと普通とは、違う空気がそこには流れているのです。 いったい何が、違うのか、保護官たちが隠しているのは、何なのか。たくさんの疑問を持ちながら、読み進んでゆきました。
ラストも、はっきりとは書かれていませんが、どのような結末が待っているのかは、歴然としています。なんで、そうなのか、どうしてこうなったのか、静謐とした悲しみが胸に残りました・・・。 (2006.09.12)