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「ひとがた流し」
  北村薫



アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は、高校からの幼なじみ。牧子と美々は離婚を経験、それぞれ一人娘を持つ身だ。一方、千波は朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢された矢先、不治の病を宣告される。それを契機に、三人それぞれの思いや願い、そして、ささやかな記憶の断片が想い起こされてゆく。「涙」なしには読み終えることのできない北村薫の代表作。 (出版社 / 著者からの内容紹介より)


本を読むとき、それまでに読んだことのある作家さんだと、名前を見て、だいたいの作品の雰囲気を想像するのですが、この本は、私の持っている北村薫さんのイメージとは、全く違っていました。私の北村薫のイメージは、「ターン」であったり、「スキップ」であったりするので、この落ち着いた、日常の積み重ねのような雰囲気に、ちょっと戸惑ってしまいました。読みながら何度も、著者名を確認してしまいました。
しかし、同じ作家でも、作風の全く違う作品を読まされるのも、読書のひとつの楽しみではあります。

ですが、やっぱり、何か特別なことが起こるのかと期待してしまったところもあって、私としては、少々肩すかし気味な読書になってしまいました。
題名の「ひとがた流し」というのも、ちょっと何かを期待してしまった原因かもしれません。

内容は、中年を迎えた3人の女性の日常の様子を淡々と描いたものです。彼女たちの娘との関係も描かれています。ちょっとした事件もあります。そして・・・。
こういう事の積み重ねがまさに人生なのかもしれません。ラストはちょっと泣かされてしまいました。

でも、今回は、登場人物の個性が薄くて私は退屈に感じてしまいました。それに、淡々とした内容の割に、千波の身に起こった「すばらしい」出来事が、普通の生活(人生)からかけ離れていたのも、あまり感情を入れ込むことが出来なかった原因です。それどころか登場人物の誰にも感情移入できなかったのも残念でした。 (2006.09.25)