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「狙われたキツネ」
ヘルタ・ミュラー  山本浩司・訳  

   


チャウシェスク独裁政権下のルーマニアを舞台に家宅侵入、尾行、盗聴。つきまとう秘密警察の影に怯える日々。そうしたなかで、ひとりの女が愛にすべてを賭ける。しかしそれには、親友との友情を引き裂くものだった…ノーベル文学賞受賞!祖国を追われた女性作家ヘルタ・ミュラーが描くチャウシェスク独裁政権下のルーマニアを舞台に繰り広げられるあまりに切ない物語。 (「BOOK」データベースより)



昨年のノーベル文学賞受賞作家ヘルタ・ミュラーの作品で、彼女の長編第一作目だったそうです。

チャウシェスク独裁政権時代のルーマニアが舞台で、政権末期から革命後までの民衆の生活を描いています。

読み始めた第一印象は、「非常に読みにくい!」でした。
それも、最初の1ページで、早くも、挫折しそうになるぐらいの強さでした・・・(^^;。

文章が、詩的・・・と言うか、とっても抽象的で、
リアルなんだけど、リアルじゃない・・・みたいな感じ(^^)。

こんな調子では、絶対最後まで読み切れないだろうなぁと思いつつ、何とか苦労しながら読み進むと、
中盤から、何とか、状況が分かり始め、
また、この文体にも、慣れ始め、急速に、読み進むことが出来ました。

この時期のルーマニア国民の生活状況のひどさが分かってくると同時に、
その困窮と、息苦しさが、迫ってきます。

そんな苦しい状況の中でも、人々は、生きていかなければならないわけで、
少しでも、自分の生活の足しになるように、知恵を絞ったり、
また、こんな時代でも、男は浮気をし、
女は、そんな夫に、”スイカの血”入りのコーヒーを飲ませる・・・うげぇーーー(^^;。
また、女たちの意外な秘密の楽しみがあったり、
子どもたちは、トマトの収穫にかり出されたり・・・。

主人公のアディーナの部屋のキツネの敷物。
これが、この本の題名となっているようですが、
これがまた不気味で、恐ろしい。
何かを象徴していて、その説明がラストにあるのかと期待したけど、それはなく、
単なる、秘密警察の嫌がらせ・・・ということだったのでしょうか。

最後まで読んで、再び、最初に戻って拾い読みをしたりしましたが、やっぱり何回読んでも、読みにくい本でした・・・(^^;。

映画「4ヶ月、3週と2日」を見ると、この時のルーマニアの状況を知る手がかりになると思います。 (2010,11,27)