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「皆川博子コレクション5 海と十字架」
皆川博子






というわけで(「影を買う店」参照(^_^))、まずは、皆川博子さんのデビュー作「海と十字架」を読みました。

「海と十字架」は、児童文学として1972年に出版されたため、単行本は、手に入らず、そのかわり、「皆川博子コレクション5」の中に収録されているものを読むことが出来ました。
でも、一緒に収録されていた他の5作品も読むことが出来て、かえってラッキーでした(^_^)。


「海と十字架」
児童文学と聞いて、軽い読み物なのかと、勝手に想像していましたが、読んでみると、児童どころか、大人でも十二分に楽しめる見事なエンターテイメントでした。
江戸時代の少年を中心とした物語で、船乗りになるのが夢の伊太、キリシタンのマチアス、そして、弥吉の3人が、波乱に満ちた人生を歩みます。
なかでも、キリシタン弾圧が激しさを増す中、自分の信念を貫き通そうとするマチアスの、強くて、澄んだ心には、驚かされます。
彼らの信仰心は、いったいどこから生まれてくるのでしょうか。
この本を読んで、皆川さんは、てっきりクリスチャンなのだと思ったのですが、これは全くの私の思い違いで、隠れキリシタンに興味を持った皆川さんが、丹念に、歴史を調べ上げて、綴られた物語でした。


「炎のように鳥のように」
これも歴史小説ですが、時代はグッとさかのぼり、壬申の乱の話です。
最初は、それとは知らずに、読みはじめたのですが、だんだんと、その時代の中に飲み込まれて、歴史音痴な私でも、苦手意識なしに、とても面白く読むことが出来ました。
物語は、山の民の少年”小鹿”と、草壁の皇子の二人の気持ちが交互に描かれていて、その立場や、考えの違いが鮮明に描かれています。
この作品を読んで、俄然、この時代の話に興味を惹かれてしまいました。
時間が出来たら、じっくりと、歴史書など、紐解きたいですね〜。


「シュプールは死を招く」
高校生向けの雑誌に書かれた作品です。
なんだか、東野圭吾風な感じで、これも面白かったです。


「暗い扉」
少女の症状に疑問を抱いた精神科の医師が、彼女を取り巻く真相を追う・・・。
中学生向け雑誌に掲載されたそうですが、TVの2時間ドラマにでもなりそうな話でした。


「戦場の水たまり」
ベトナム戦争下、両親を失ったヨンが、ある日見つけた小さな水たまり。
そこには、明るく、楽しい世界が広がっていた・・・。
どんなに暗い時代でも、ほんの少しの夢の世界が子供を救います。
でも、それは、本当に夢なのでしょうか


「コンクリ虫」
とてもかわいらしくて、楽しい話でした。
不思議な生き物”コンクリ虫”のお話です。



というわけで、どれもみんないい作品でした。さすが皆川先生!!
特に、私のお気に入りは、「炎のように鳥のように」ですが、もちろん、表題作「海の十字架」も、読み応えたっぷりで、すばらしかったです。 (2014,06,10)