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チャイルド44
トム・ロブ・スミス




スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。 (裏表紙より)



2009年版『このミステリーがすごい!』で1位に輝き、去年映画化もされた話題作で、実際にあった事件を元にして書かれた小説なんだそうです。
残念ながら劇場には行かれなかったので、まずは原作から。

前半は、スターリン時代のソビエトの描写から始まります。
でも、これがすごい・・・。
この時代のソビエトが、こんなに暗くて不自由で困難きわまりない時代だったとは・・・。
これは、私の想像をはるかに超えていました。

まず、冒頭は、1933年。
この年、ソビエトは深刻な大飢饉に見舞われ、多くの人が亡くなったそうです。
そんな時代の、信じられないような生活・・・(T_T)。

それから話は飛んで20年後。
まだまだ国は貧しいのに、スターリン政権は、この国を理想の国家として、不平不満を許さず、全てを国の管理下に置いて、多くの罪なき人が、闇から闇に葬られていた時代です。
その時代に、国家権力を象徴する仕事をしていたレオが本作の主人公です。

小説が半分まで進んでも、まだ、この小説のメインとなる殺人事件は、ほとんど登場せず、サスペンスなのか、社会派小説なのか、よく分からないままでした。

でも、多くのページを割いて描かれてきたことが、後半になって生きてくるので、事件の真相に迫る後半は、怒濤のごとく読み進むことが出来ました。

歪んだ社会で起こった悲惨な事件の顛末は、何とも言い表すことの出来ない苦しいものでしたが、正義がほの見え始めると、そのわずかな光が、大きな希望へと繋がる期待に、気持ちが高ぶりました。

しかし、読み終わってみると、一番記憶に残ったのは、当時のソビエトの人たちの生活でした。
これを読むと、私たちの今の自由な生活に心から感謝したくなります(^_^)。 (2015,10,23)


映画「チャイルド44 森に消えた子供たち」(2014)