半身
サラ・ウォーターズ
独房からは信じがたい静寂が漂ってきた。獄内の静けさを残らず集めたより深い静謐が。それを破ったのは溜息。私は思わず、中を覗いた。娘は眼を閉じ・・・祈っている!指の間には、鮮やかな紫ーーうなだれた菫の花。1874年秋、倫敦の監獄を慰問に訪れた上流婦人が、不思議な女囚と出逢う。娘は霊媒。幾多の謎をはらむ物語は魔術的な筆さばきで、読む者をいずこへ連れ去るのか?
(裏表紙より)
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「茨の城」で、サラ・ウォーターズに、はまってしまったので、一番始めに日本で訳されたこの作品を読んでみました。
舞台は、17世紀。イギリス。
ワケありの上流階級の貴婦人と、彼女が慰問に出かけた監獄に囚われる霊媒の女囚との関わりが描かれます。
映画を見て内容を知っていた「茨の城」も、後半が特に面白かったのですが、この作品も、終盤が怒濤のごとくで、そこへの収束の見事さが本作の全てであるといっても過言ではありません。
とはいえ、前半は、謎に包まれすぎていて、とっても読みにくく、挫折しかかったこともありました(^_^;。
特に、最初の数ページの存在は、微妙で、わかりにくかったです。
でも、徐々に徐々に、貴婦人のマーガレットと、女囚であるドーズのことが明らかになってくると、やっとその部分も理解できるようになりました。
当時の人たちの、霊への関心や、関わりがどうだったのかということも興味深いですが、
信じる人もいれば、信じない人もいて、そのあたりは、今も昔もあまり変わってないですね。
ラストのラストで、もひとつガツンとくる衝撃も、見事でありました。
本作は、35歳以下の作家が受賞できる”サマセット・モーム賞”を2000年に受賞しています。
(2018,03,28)
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