2 H 14年 度・学校獣医師制度に向けて、活動報告(H15年度年次大会報告)

平成17年度、行政による獣医師会との連携事例内容  
   

 日本小動物獣医師会 H14年度活動報告・学校獣医師制度に向けて 
(平成15年8月23日 年次大会(札幌市)抄録より)

日本小動物獣医師会 動物介在教育支 援・学校飼育動物対策委


この報告書を作るにあたり、各県、政令都市、市 町村獣医師会のかたがたにご協力をいただきました。
 皆様すべてが快く対応してくださり詳細に情報をくださいましたことをここにご報告をすると共に、皆様に心より感謝申し上げます。                 

                       日本小動物獣医師会学校飼育動物対策委員会
                             副委員長  中川 美穂子


 学校獣医師とは、動物を健康に維持 し、子どもが安心して動物に気持ちをかけて飼育できるようにして、子どもの成長に良い影響を与えるように、地域の学校を支援している獣医師を言う。

       目次 
   はじめ に 
  
(1)経過
   
 (2)学校の実情
    (3) 現在の自治体と獣医師会の連携状況            

          1連携契約の傾向
      2、自治体の事業費の傾向                
      3、 H15年6月現在 連携事業のある自治体 (削除)         
      4. 事業としての連携のない県あるいは市区町村自治体    
      5、 講習会を開催した地域
  (4)最後に

           ( 平成17年度、行政による獣医師会との連携事例内容 
はじめに

 昭和年代から、学校の動物飼育について、動物を健康に維持し、子どもが安心して動物に 気持ちをかけて飼育できるようにして、子どもの成長に良い影響を与えるように、各地の獣医師が学校を支援している。しかし、順調な飼育が行われる学校はま だ少なく、また支援体制もまだ広がっていないため、劣悪な飼育状況が子ども達の気持ちを傷つけることが見られ、子どもや保護者などが、獣医師の所に駆け込 むことが各地で見られている。

 日本小動物獣医師会は、平成10年以来、この問題を認識した文部科学省の視学官方の協力を得ながら、各地で教員や獣医師 あるいは、市民向けに講習会などを開催して、教師や獣医師に課題と解決法を示してきた。また、各方面にこの問題についての情報を流し、

この問題の根本的な解決には、下の4点が必要であると提示してきた。
    @教員養成課程で「人と動物の関係」を含んだ授業を行う
    A現教員向けの「飼育の効果と方法」に関する研修を行う
    B地域獣医師会の協力による学校獣医師制度の確立
    C獣医学教育の中での「飼育の効果と支援方法」の授業

 またそのために、教育課程に動物教育を位置づける必要 があるため、飼育が子どもの成長に寄与するという調査研究結果を示してきた。

昨年からのこの問題の経過をお知らせする

(1)経過
 1
日本学術会 議
 
平成142月より日本学術会議がこの問題の重要性を認め、科学教育研連と獣医学教育研連の協力で勉 強会を行い、その成果として平成1410月に「学校教育における学校飼育動物」とのシンポジウムを開催した。このシンポジウムを 企画遂行した国立教育政策研究所の鳩貝太郎総括研究官は、その報告書をまとめたが、両部会は外 部報告として

   @適切な飼育法につい ての基礎的教育を教員養成課程に取り入れる。
   A各地の教育委員会と獣医師会の協力 関係 を推進する。
   B飼育の教育上の効果に関する研究を活性化し、成果を取り入れ、生命尊重、生命科学等の教育の充実を図る(略)。

3点を、平成156月、日本獣医師会が文科省に示した「初等教育における動物 を活用しての情操教育について」(平成10年)の提言を添付して提言した。

2、国会答弁
 平成
15228日に国会で「学校の動物飼育問題」に関する質疑があり、保守新党の山谷えり子議員の質問 に対して河村文部科学副大臣が

*飼育は丁寧に行えば児童の成長に多大な良い影響があり、文部科学省は以前より、地域獣 医師の支援の重要性を考え、学習指導要領の解説書にも飼育に際しては地域の獣医師会と連携して、健康な動物を飼育するようにと書き入れてある。しかし、現 状を鑑た上で

   @現教員向けの研修会が必要
   A教育大学でのこれに関する授業も必要
   B(飼育支援体制として)地域獣医師会との連携を推進する
   C当然予算的な手当ても必要になり特に対応を考えたい   と、明言した。

3、文部科学省の飼育マニュアル発行

 平成15年春(4月末)、この国会答弁を受けて、平成11年からの懸案だった文部科学 省の飼育マニュアル「学校での望ましい動物飼育のあり方」を、全国公立小学校、養護学校、盲学校、聾学校すべてと都道府県知事室、教育委員会、市町村教育 委員会などに配布した。

 発行を知らせる文書には、文部科学省はこの問題で日本獣医師会と協力体制をとってお り、日本獣医師会に500冊を寄贈し、都道府県獣医師会に配布すると明記してある。また日本獣医師会は、平成15年度、学校飼育動物に関する 委員会を組織する模様である。

*「学校における望ましい動物飼育のあり方」(文部科学省発行)の内容

 この本は、文部科学省に委嘱された日本初等理科教育研究 会が3名の獣医師の協力のもとに飼育のあり方をまとめたもので、われわれの主張のとおり、その基本姿勢について
「飼育とは、(単に世話をするといことではなく動物と)ともに暮らすことである」
「学校での飼育は、ゆとりある飼育(子どもの教育のために、世話のより楽な動物を手が回るだけの頭数を丁寧に飼育する)をめざす」と、明記している。

 なお、動物の選定から飼育法、衛生管理法、ふれあい指導 まで、折にふれ「獣医師に相談するように」と記述してあるが、特に第3章3節「動物飼育のためのネットワークつくり」に、獣医師会との連携について詳しく 記述している。

その中には、

学校、自治体、獣医師会、地域ボランティアでのネットワー クづくりの必要性と連携のあり方が述べてあり、
1、飼育動物の健康を維持するとともに、生命に関する教育や心の教育をより積極的に進めることや、教職員の負担を軽減すことが期待できる。
2、学校は、飼育に関して目的、意義、考え方を明らかにし、飼育方法、経費、教育課程上の位置付け等を明確にする。また、課題を明らかにし、必要なら獣医 師等の協力を得ること。また教職員、獣医師、PTA、地域ボランティアなどを含めて検討会や学習会を開くようにすることが望まれる。
3、自治体は、飼育の実態を把握し、学校と獣医師との緊密な連携体制を構築することや必要な予算措置をすることが望まれる。
4、獣医師会は連絡網などを作成し、これを学校や教育委員会に示して、常時緊密な連携、対応が図れるようにすることが望ましい。定期的な巡回(訪問)指導 などで、予防医学に力をいれることも大切である。
5、地域ボランティアに対して 休業日や災害の時などについて、必要な協力を求めることが考えられる。

と記述し、その具体例としてN(西東京)市の取り組みを示 してある

具体例:市立小学校での動物飼育が円滑に行われ、児童の教 育に活用できるように、市獣医師会と契約を結び 飼育指導、定期訪問、講習会、日常的な相談受付、治療などを委託する。獣医師会は実績を期末に自治体に報 告する。自治体はこれに従い、期末に獣医師会に対して契約事業費を支払う。                    

(2)学校の実情

 この問題は自治体に帰することであり、教育者は、文部科学省が何を言おうと「動物を飼 うかどうかは校長が決め、どのように動物を扱うかは担当教師の情熱と善意による」と、言う。それで、この本が全国の小学校に届いた時、「こんなに面倒 なら、飼育を止めようか」と、思う学校もあることも懸念される。しかし国は、現在の状況から「心の教育」の必要性を感じ、を作って 飼育を教育に活用でき るようにするよう地域で飼育を支える体制を作るように指導している。これは、今まで全国で認められることもなく動物たちと子ども達に心を痛めながら飼育を 支えてきた獣医師たちの想いでもある。

 上記の一連のことで、徐々にでも教育者がこの問題を認識してくれば、動物を取り巻く状 況、子供たちの教育に飼育の良い影響が及ぶことが、期待されるだろう。

(3) 現在の自治体と獣医師会との連携状況

 獣医師会と自治体との連携事業数は平成10年度以来急激に増加し、今年 度27県 に渡って100近くの自治体で申し合わせや契約が行われる予定である。H14年の段階で全国の係わる小 学校は1割 を超えている。

1、H14年10月現在の契約の傾向
実際の連携内容を示す。

   @飼育指導:講習会あるいは各小学校への定期訪問活動
   A日常的な相談受付:学校獣医師として、学校の相談に対応する
   B授業支援:動物とのふれあいを通して、ゲストティチャーを努める
       生活科、理科、総合、道徳、委員会活動
   C連絡
検討会:自治体、獣 医師会、校長会、PTAなど、実績を踏まえて、より良い方法を検討する
 

 最近は、Aだけに対応する「学校が動物をつれて来院したら診療に応じる」だけの支援契 約は減少し@やAの獣医師が学校を定期訪問をして、現場で教師と交流しながら飼育指導をし、子ども達へも指導を行う(トラブル予防と教育の)契約が増加し ている。

古くから連携している「治療だけに対応する連携例」では、飼育状況が改善しづらく、ま た、教師が動物の治療の必要性に気がつかないため、治療実績が減少し制度が形骸化しているところもある。現在、改善に努力している獣医師会も見られてい る。

なお、学校側が最近望んでいるのは、Bの方法、特に群馬県獣医師会方式の「《ふれあい教 室》子どもにふれあい方を示し、体験を与えながら知識欲をかき立てる方法」である。

また、学校の飼育そのものを支える活動も歓迎されており、学校固有の動物と子供たちが触 れ合うことを獣医師が手助けすることで、子どもたちに命への理解、庇う気持ち、情愛、他への共感、科学的に観察する冷静な視点などを培うための援助をして いる。

2、事業費

 平成11年度には教育委員会は「連携事業予算の相場は11万円」と発言していたが、徐々 に改善され3万円近い例が多くなっていた。平成15年度、4から6万円を提示する自治体も出ている。しかし、教育関係者や行政が動物の重要性を理解してい ない自治体では、交渉は難しい問題を含んでおり、PTAなどと協力して慎重に行政と話し合い、子ども達のために、長く維持できる体制を作るため に、あちこちの獣医師会が努力している。

開業獣医師にとって一番つらいのは病院を留守にすることであり、事業費が、たとえ年間10万円であっても、病院を留守 にすることを補うことはできない。そのため獣医師はあまり契約金額にこだわらない傾向がある。しかし、将来安定した制度を作るためには、他業種との自治体 の契約を鑑みる必要があるだろう。

     3,削除

4、現 在、連携事業のない獣医師会の状態は下のようになっている。 

講習会などに行政の予算で講師を派遣するが、他の活動への予算はつかないまま対応している    
                                                       
行政の認識のもと、無償で活動 
獣医師会が行政以外の支援者を得て活動している    
獣医師会が独自に活動し、行政に働きかける段階
獣医師会が内部で勉強会をしている段階
                             
現在、特に対応していない獣医師会       


(4)最後に

 平成1012月に日本獣医師会は、文部科学省に対して、この問題に対する全面支援を内諾している。そ の半年後、文部科学省の学習指導要領解説書生活科編には、獣医師と連携して飼育を行うようにと、明記された。さらに平成145月 動物愛護法の基準に「教育 施設での動物飼育は、獣医師等の専門家の指導のもとに行われるように努めること」と、明記された。各地獣医師会は、日本小動物獣医師会と文科省の協力で、 平成10年 以来「飼育の意義と課題、獣医師のかかわり方」について講習会を開催してきたが、今回の文部科学省の飼育マニュアルに獣医師と自治体との連携が詳しく明記 され、いよいよ「獣医師界全体で将来を担う子ども達を育てる支援体制を整える」ことが求められていると言える。

 なお、この問題に関心のある獣医師会員は「全国学校飼育動物獣医師連絡協議会メーリン グリスト」を作り情報交換をしている。登録会員は北海道獣医師会事務局から沖縄県獣医師会事務局を含んで388名を数え、他にも情報を受 け取っている獣医師や団体は多数あり、日本獣医師会事務局をはじめすべての(社)獣医師会が網羅されている。

 未登録の獣医師会員のかたがたも、是非情報を共有して、「学校にかかわることは、開業 獣医師にとって特に難しいことはあまりない」と、知っていただきたい。



平成17年度 自治体と獣医師会の連携事例まとめ

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