獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201011-19

Re5:うさぎの腎臓病予防について
投稿日 2010年11月16日(火)15時07分 投稿者 プロキオン

すでにチーママさんのレスがありますので、屋上屋を重ねる事になりますが。

>今回別の先生から『BUN100以上、CRE3.0以上あったとすると腎不全』という具体的な数値を聞いて、こちらの数値が腎不全と診断される数値なのかと;?
医学的な質問になってしまうのですが、うさぎが腎不全(腎臓病)と言われる具体的な数値はだいたいいくつくらいなのでしょうか?


BUN100、CRE3.0 が腎不全と診断する基準なのかというと答えは否です。
まずもって、臨床症状が先にあって、検査していってBUNが高い、それでは肝臓か腎臓かということで、CREが高いALTは問題ないという順序が必要です。
高い数値が検出されても、臨床症状が発現していなければ( このくらい高ければ発現していないこともないはずですが、)腎不全という診断には躊躇ってしまいます。
また、ALTも高ければ、腎不全だけではないと考えますし、もっと端的に言えば、CREが2.9 あるいは2.8 であったとしたら、腎不全だと判断してはいけないのでしょうか?このような数値は常に仮の数値であって、絶対的なものではありません。3.0 がまだ上昇していく途中なのか、それとも下降してきているのかも考えなくてはなりませんし、もっと言えば、検査機器を変えれば、同じ血液検体でも異なった数値となります。その都度、腎不全だ、いや治った、再発したと右往左往しなくてはならなくなります。病状が変っていない状態で数値に振り回されていたら、それこそだれからも信頼されないと思われます。
まず、ウサギ自身を診ることがあって、しかる後に客観的な数値で病状とその推移を把握することです。数値は、レベルを誰にでもわかるように置き換えているだけのことにすぎないのですから。

正常範囲というのも、
 ある飼育書 :BUN17.0〜23.5 mg/dl CRE0.8〜1.8 mg/dl
 ある獣医学書      :BUN13 〜29  CRE0.5〜2.5
 ある検査機器の付属データ:BUN11 〜27 CRE0.6〜1.4

という3種類の数値が私の手元にはあります。さて、私はどの数値を正常値として考えれば良いのでしょうか? CRE3.0 という数値も、これらの正常値と言われる各々の数値と比較すると、正常範囲から離れているとも、たいして離れていないとも言えます。
また、先ほど検査機器が変れば数値も変ると申しましたが、これも実際あることであって、糖尿病の血糖値の測定の際に、2種類の検査機器で測定したところ異なる数値となりました。僅差であれば問題ともならなかったのですが、少々差がありましたので、それぞれの機器のメーカーに問いただしました。しかし、どちらも自分のところの機器を信用して欲しいという返答でした。同じ検査サンプル・同じ検査機器であっても、測定した時間が異なれば同じ数値ともかぎりません。それこそ、3,0なら腎不全、2,9なら腎不全ではないという議論をしているわけにはいきません。それに拘泥していれば、検査機器のなかった時代には腎不全という診断はなかったという極論にさえなりかねませんよね。

結局のところ、検査で得られた数値は、診断するための補助手段でしかなく、これを絶対視するものではないということになります。また、成書においても具体的な数値でここからが腎不全とするという明確な記述はありません。仮にあったとしても、合併症でもあれば、そのような数値に拘っているわけにはいきません。
正常範囲の数値もこれと同じであって、測定した者のサンプルとなったウサギの範囲に置いては、だいたいこのくらいであろうというだけのことです。量的にどのくらいの差があるかということは参考にしますが、特定の数値(ポイントもしくは点)としてだけの捉え方はしない方がよいと考えています。

なお、診察されていた先生が、生存率20%とか、18%とか発言されていたそうですが、こちらの数字も そのままには受け取らない方がよいように思います。
なんとなれば、老猫の多くは、慢性化した腎不全をもっています。その時点で検査数値にかかわらず、転機は定まっています。慢性腎不全は治癒することはありませんから、言うなれば、生存率は0%です。
しかし、実際には、老化と共に失われていく腎機能と付き合いながら生きていくというのが老猫の人生であって、そこまでの期間を生きていく事にこそ、意味があります、その間、猫達もよほどの事が無い限り、普通に暮らしているはずです。
生存率何%というのは、回復することが前提にあってのこととも言えますが、それこそ、具体的な数字をもって測る事は困難です。おそらく、統計的なお話をしているのだと思いますが、現状のウサギをめぐる医療事情で得られた情報の中でどこまでのことが言えるのかという気もします。
ウサギは、草食動物であって、体内に摂取してカルシウムを余計に排泄しなくてはならないという生理的な負担もおっていますので、腎臓にもそれなりの負担がかかっていると考えられます。猫には猫の腎不全があり、ウサギにはウサギの腎不全があるのだと思います。それらの同じ点、相違する点を逐一説明出来るほどには、私達はそれぞれの動物のことを知ってはいないのではないかと思います。

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