災害と動物掲示板過去発言No.0700-202101-2
Re:被曝動物と汚染瓦礫の拡散 |
投稿日 2011年11月3日(木)12時38分 投稿者 プロキオン
私が、放射線について学んだというのは、ごくごく短い期間にすぎません。当時の私は新採用に毛が生えただけのペーペーの県職員でしたが、私の振出しが県庁の本課の衛生係りでして、そこで国のメニューに「生化学検査施設」の整備事業というのがありました。未整備県でしたので、ウンもスンもなく、これに手をあげる必要があり、国と予算のやりとりをすることになっていました。 この整備する機器の中に「ガスクロマトグラフ」という機械があって、この機械にニッケル63が装備されたエレクトロンキャプチャーディテクターという検出器がついているのといないとで、精度に大きな違いあるのです。 まあ、この検出器を付けさせるために、「放射線取り扱い主任者免許」を有している安全管理に責任を負う者が、その事業所にいる必要があったわけです。で、国の予算獲得の目処がついたのと時を同じくして、生化学検査施設が整備される予定の家畜保健衛生所に私は異動となり、潜在的にこの資格試験の受験予定者とみなされていたことになるわけです。 この試験には、それ以前に何名かの獣医師が受験していたのですが、結果がよろしくなく、進んで受験しようという者がいなくなっていました。 そのまま受験したのでは、合格できないであろうことは、私にも分かっていましたので、まず百科事典のα線・β線・γ線とは何かから勉強を始め、次に高校時代の教科書を探してきて、読みました。私のスタートは、そのくらいのレベルからです。 事業所の方でも、受験する者がいるならということで、4週間の「日本原子力研究所」の基礎課程の研修の枠と確保してくれました。ですから、私の知識のほとんどは、この4週間に学んだ内容です。 学科と実技がありましたが、学科の方は、関数電卓を叩いていても計算の意味するところを理解できないままでした。実技の方は、コンクリートの壁の厚さを放射線を使って測るとか、貝殻を溶かしてその中の炭素14を測定して年代を測るとか、あるいは、やはり炭素14を使った二酸化炭素を植物の葉から吸収させたオートラジオグラフィとストロンチウム90を根から吸収させたオートラジオグラフィの撮影とかがありました。 この葉から放射性核種の吸収と根からの吸収の画像を比較して見ますと、それぞれの核種による植物体内における分布の相違が一目でわかるわけでして、特定の核種のみについてだけ言及することの意味のなさというか、意図的に過小に評価しようとしているのが見てとれるわけです。 放射性物質という存在は、壊変と言われる分裂を繰り替えして、別の安定な物質に変化するまでは、決してなくなることはありませんので、実技の主眼は、このような事に放射線が利用できるというだけではなく、汚染を受けないための手技や汚染されてしまった際の除染方法とその後の取り扱いに教育的な意図がありました。 ですから、本当に基本中の基本であって、そこをはしょったり、ごまかしたっりしていることが、所謂専門家の慣れや驕りと言えるのではないかと考えています。 もともと、原子力安全委員会が発足した当初の目的に「夢のエネルギー」として、国策が入っており、使用済み燃料の処理をどのようにするのかが未定のまま走り出してしまいました。出口やゴールがないまま走り始めてしまったマラソンですから、今回のような事故が起きてしまえば迷走せざるをえないのも無理はないところです。 ノンフィクションライターの柳田邦男さんの著書の中に、「大きな組織が岐路に立たされたときに、求められるのは、人材とそれを支える技術だ」というのがありました。まず、決断して進むべき方向を定める力量をもった人間が不可欠ですし、その決断を支えるだけの技術が集わなくてはなりません。当然、正確な情報がなくてはなりません。 確かに放射線について学ぶのは、難しいですし、短期間にというのも無理があります。ですから、理解しているであろう所謂専門家に任せてしまうのですが、その当時者にも自分の立場や今まで携わってきたものがありますから、思惑の入る余地はあるように考えます。 けれども、後々どうにでも修正がきくというような事が起きているわけではないのですから、今、進行している事態について、基本に忠実にかつ予測しうる事に対して、できるかぎり対応策をとっていくということが必要なのだと思います。予測可能なことに対して口をつぐんでいるのは、科学者として不誠実だと思うのです。 まあ、それでもいろいろ言われるわけでして、発言意図を判じかねるものもありました。 獣医師広報板には、「命は大切であるけれども、全ての命が同じ重さはではない。」という発言がありまして、「ノーキル」のような考えとは一線を画しています。この掲示板に掲載されているのは、それこそ私の個人的な意見にすぎないのですが、その時、その時で大切なものは、何かを一人ひとりが考えているということになるのだと思います。
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