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「暁の寺」
三島由紀夫
<悲恋>と<自刃>に立ち会ってきた本多には、もはや若き力も無垢の情熱も残されてはいなかった。彼はタイで、自分は日本人の生まれ変わりだ、自分の本当の故郷は日本だと訴える幼い姫に出会った・・・。認識の不毛に疲れた男と、純粋な肉体としての女との間に架けられた壮麗な猥雑の世界への橋ーー神秘思想とエロティシズムの迷宮で生の源泉を大胆に探る『豊饒の海』第三巻。 (裏表紙より)
またまた、読み終えるのに、長い時間がかかってしまいましたが、やっと『豊饒の海』第3章を読み終わりました。
美しくも切ない清顕と聡子の恋物語だった第1章
「春の雪」
、
清顕の生まれ変わり、勲の壮絶な青春を描いた第2章
「奔馬」
。
そして、この第3章は、宗教・・・というか、”哲学”について深く語られます。
仕事で訪れたタイで見た、暁の寺の息苦しいほどの美しさ。
幼い姫との不思議な邂逅。
あぁ、またしても彼は、清顕の生まれ変わりと出会ったのでしょうか。
そして、訪れたインドでの衝撃・・・。
その後は、仏教における、無我と輪廻転生の矛盾。
第六感の次にある末那識と、阿頼耶識の話。
この辺り、難しい宗教・哲学論が延々と続くので、目で文字を追っても、私の頭は、すぐに、拒絶体勢になってしまって、読んでも、頭に入ってこないし、苦痛でした(^^;。
やっとその苦役が終わると、今度は、本多の老いらくの恋です。
50代になって、金銭的に恵まれた彼が陥った密かな性癖。
ちょっとちょっと、本多さん!!(^^;。
そして、その見苦しさは、本多ばかりでなく、彼の周りに存在する人たちにまで広がっていて、
年を重ねることの醜さを感じずにいられませんでした。
この本は、『豊饒の海』4部作の、起承転結の、”転”に位置する小説で、
まさしく、「素材を転じて発展させた」(大辞泉)のでしょうか。
いよいよ次は、”結”の、「天人五衰」です。
本多は、そして、輪廻転生の結末はどうなるのか、読むのが楽しみです。 (2011,06,26)
『豊饒の海』
「春の雪」
「奔馬」
「暁の寺」
「天人五衰」