ネコ掲示板過去発言No.1200-200804-29
>みぃママさん 「乳腺腫の手術」 |
投稿日 2008年3月16日(日)11時35分 投稿者 プロキオン
タイトルが長くなったので、変えました。 乳腺腫の手術をなされているのですね。つい先ごろ「意見交換」でも乳腺腫の手術を否定されている先生がいらして、飼い主さんが相談にみえたばかりでしたね。 乳腺腫の手術を避けたいと考える先生は、やはりいることはいます。この手術の場合ですと、腫瘍周囲の切除する安全範囲を大きく見込みしすぎてしまうと、縫合するときになって、皮膚が足りなくなってしまい寄せて縫合することができなくなることがあります。 この時に強引に縫合しても縫合した皮膚に引っ張る力が働いて皮膚そのものが壊死してしまうことがあります。そのような事がおきますと、かなりとんでもないこととなります。これを経験したことがあると、つい手術そのものを避けたくなるようです。 また、みぃママさんの猫ちゃんにおきた体液がいっぱい出てというのも、よくあります。術創の中に体液が貯留して、傷も腫れるし、縫合糸への張力も増して上記のような事態が発生する原因の1つともなります。排液が多いと予想されるときは、排液用のドレーンを設置したり、傷の一部を縫合しないで開放創として液体が内部に貯留しないように留意しなくてはなりません。 この体液は、乳腺という組織が血管に富んでいることと、この乳腺組織を周囲から剥離する際に組織に与えたダメージが大きいとそれに比例して出てきます。結果的に、ぐちゃぐちゃ・びしょびしょで皮膚が無くなってしまったという状態ですね。たしかに執刀したものにとっては二度とやりたくないと思ってしまうことでしょう。( そこを踏ん張ってもとどうりにしなくてはならないのが本来の仕事なのですが ) 人間の方でも年間2000例の乳腺腫のオペをこなしていて、現在の名医○○人というような出版物で名称をあげられている医師の手術が、ちょうどこのような手術で、ひどい瘢痕化した痕を残していました。これは、あまりにも稚拙な手術ということで、マスコミが追求していました。私もテレビの映像で見たその手術の痕跡は、正直ひどいと思いました。女性の乳房というのは、「美」の象徴でもありますから、ただ単に切れば良いというものでもありません。テレビに映ったあの手術の痕は、あまりにもお粗末であり、2桁にしかならない私の乳腺腫の手術の方がはるかにましです。どこにメスを入れているかくらいは認識したうえでの手術であって欲しいです。切り刻むことが手術ではありませんし、自分に適性がないと判断できる分別も医師には必要ですよ。 瘢痕かしてしまった自らの乳房を人目に晒してまで訴えていた被害者の女性達は気の毒でした。 乳腺腫であれば、メスを入れる前に考えておかないとならないことがあります。どの位置からメスを入れて、どのような切皮のラインをとるか、そしてどのように剥離して、どのように皮膚を伸展させるかが大切です。 術式はあまりむずかしくはないですが、ていねいな仕事が求められますね。 避妊手術の埋没縫合というのも、実施されている先生も多いですよ。これも舐めて糸を切られないようにですが、丁寧に一本一本やってるとちょっと時間がかかりますね。大抵の場合は1本の糸で連続縫合で実施されているように思います。 ただ、傷口の創縁を綺麗にあわせるのには、あまりむいていないです。犬の去勢手術の場合ですと、私も「埋没縫合」にしています。これは術後1晩でナイロン縫合糸を舐めて切られてしまったことが2回ありまして、場所的に金属糸を使用するよりは埋没だろうという判断に至った次第です。雄犬はあの部位を舐めるのは仕事みたいなものですからね。 飼い主さんには、「普通に縫合するよりも傷跡が残りますが…」と断りを入れるようにしていますが、今のところクレームはないです。
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