獣医師広報板ニュース

野生と自然掲示板過去発言No.4000-200205-36

マレック病追加
投稿日 2002年5月16日(木)20時15分 プロキオン

あのう〜、質問の意図が分かりかねるのですが?

>鶏肉給餌によって救護された猛禽が感染、放され、時にはマレック氏病で死
 亡する、死亡する前に他の鳥に感染させる、死体から他の鳥に感染する、と
 いう経路と、開放鶏舎に出入りする野鳥が感染する、捨てられた鶏糞や鶏の
 死体から感染する、という経路、重さの割合はどんな感じなのか教えていた
 だけますでしょうか。

野鳥でこの疾病で死亡したという報告自体が出たばかりだからこそ、書き込ん
だのであり、実際にどのくらいの感染が広がっているかの調査に手をつけた方
もまだいないはずです。
私の実施した調査というのは、あくまでも鶏を対象としてものです。したがっ
てこの質問には回答不能です。


>鶏舎からの感染が多くあるなら救護個体に鶏肉を与えないようにするだけで
 なく日本中の鶏をなんとかする必要があると思うのですが。

通常は、マレッック病はブロイラーに多く見られる疾病であり、ブロイラーは
無窓鶏舎(ウインドレス鶏舎)で飼育されいます。したがって、直接的な野鳥
との接触はありません。この形式の鶏舎はブロイラーに余分な運動エネルギー
を使わせないためのものと考えられていますが、野鳥との接触を断ち、感染性
の疾病を持ち込ませないためでもあります。
採卵鶏の場合は、開放式になっておりますが、成書に目を通されているのであ
れば、採卵鶏におけるマレック病が少ないことは御承知と思います。

また、日本中の鶏をなんとかする必要があるとは、私には思えません。養鶏農
家にしてみれば、日本中の野鳥をなんとかしたいという意見がでるかもしれま
せんが。
私は野鳥救護に携わる方やそれを志す方に注意していただければと考えている
だけです。

>また手元の成書には感染性のウィルスを産生するのは羽包上皮が感染したと
 きだけでふけから伝播するとあるのですが、

これは、誤解があるようですね。成書においては鶏から鶏への感染経路を想定
したものです。ウイルスの核酸は塵埃やパウダーとともに飛散するくらいの意
味です。

>その後に筋肉や内臓中のウィルスも感染能を持つと判明したのでしょうか

こちらも誤解されているようです。「その後」ではなく「最初から」です。
羽毛上皮にしか感染性をもつウイルスが存在しないのであれば、内臓や神経組
織に腫瘍性の病変を形成することはありません。ウイルスがリンパ系細胞に感
染し増殖するからこそ、あの病変(病巣)が形成されるのです。
したがって、ウイルスの標的細胞が存在する部位、つまり血液が供給される組
織であれば、どの部位であろうと感染が成立する可能性はあります。
鳥類においては、腺胃乳頭下においてリンパ組織が存在していますので、内臓
や肉を直接給餌する行為は、羽毛上皮云々よりもはるかに直接的な感染の恐れ
が存在します。

自然界における疾病の拡散は人間の手の届かないところで進んでいるのであれ
ば、これはいたしかたありません。
でも、救護において感染させているのであれば、これは反省すべき事項です。
私達が口にしている鶏の肉がどのくらいの比率でマレック病ウイルスと接触し
ているかというと、これは50%どころの数字ではないのです!

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