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「犯人に告ぐ」
雫井 脩介  







劇場型犯罪VS劇場型捜査
反響止まらぬ傑作エンターテイメント!(帯より)



「虚貌」「火の粉」と、私お気に入りの本の著者、雫井さんの著作です。2段組の大作でしたが、読みやすくて、ペロリと読んでしまいました。

ただし、私の興味は、題名から想像されるところの、犯人逮捕劇よりも、むしろ、警察内部の体質のひどさの方に向いてしまいました。

第一の事件にしても、警察の縄張り争いに誘発されたミスと言ってもいいでしょう。これは、被害者の親にとっては、やりきれないことですよね〜〜。いつまでこんな事やってるんだい!と、フィクションであるにもかかわらず、読みながら、怒ってしまいました。
メインの連続殺人事件にしても、まずは、足の引っ張り合い。ラストにも、衝撃の事実が分かり、腰から力が抜けてしまいました(^^;。これでは、解決する事件も解決できなくなってしまいますよ。なんだかむなしいなぁ。

この小説の一番の読みどころの、劇場型捜査。これは、まずまず面白かったですが、視聴率競争の激しいTVで、警察が特定の番組で、犯人に呼びかけるなど、絶対に有り得ないだろうなぁと、ちょっと冷めつつ、読み進んでゆきました。
それに、これをやるとしたら、本当に巻島の様な、見事な刑事=役者が出てこないと無理でしょうからねぇ。

その巻島自体も、「ヤングマン」と呼ばれる、刑事らしくない捜査官、ということですが、私生活では孫もいるということで、イメージと、実年齢とが、少々合わずに、戸惑ってしまいました。

結局、冒頭の事件も、うやむやで、バッドマンの逮捕にしても、あれだけの大捜査陣を敷いて、結局、こんな単純な方法で逮捕、というのは、肩すかしでしたねぇ。犯人にしても、簡単に逃げおおせることが出来たはずなのに、どうして、じっとしていたのか、理解に苦しみます。

内部のごたごたに力を入れすぎるあまり、肝心の犯人との対決がお粗末という気がしてちょっと残念でした。 (2005.06.13)